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税効果会計

第4回:その他有価証券の評価差額に対する税効果会計

2010.08.06
新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子

その他有価証券の時価評価に伴い発生する評価差額は、税効果会計適用上の一時差異に該当し、これについて繰延税金資産又は繰延税金負債が認識されます。

1.原則的な処理

評価差額を、評価差損と評価差益に区分し、銘柄ごとに繰延税金資産又は繰延税金負債を認識します。

2.許容される処理

  1. その他有価証券の評価差額のうちスケジューリング(一時差異の将来解消見込年度のスケジューリングをいいます)が可能なもの
    原則的な処理と同様に、評価差額を評価差損と評価差益に区分し、銘柄ごとに評価差損(将来減算一時差異)については回収可能性を検討した上で繰延税金資産を認識し、評価差益(将来加算一時差異)については繰延税金負債を認識します。
  2. その他有価証券の評価差額のうちスケジューリングが不能なもの
    評価差額を評価差損と評価差益に区別することなく、各合計額を相殺した後の純額の評価差損又は評価差益について、繰延税金資産又は繰延税金負債を認識します。
  1. (ア)純額で評価差益の場合
    純額で評価差益の場合には、繰延税金負債を認識します。ただし、当該評価差益はスケジューリング不能な将来加算一時差異ですので、繰延税金資産の回収可能性の判断に当たっては、評価差額以外の将来減算一時差異とは相殺できないものとして取り扱います。
  2. (イ)純額で評価差損の場合
    純額の評価差損はスケジューリング不能な将来減算一時差異ですので、原則として当該繰延資産の回収可能性は無いものとして取り扱います。ただし、その他有価証券は、通常は随時売却が可能であり、長期的には売却が想定される有価証券ですので、会社の業績等の状況を回収可能性の判断基準とすることができるとされます。業績等の状況を判断基準とするということは、「委員会報告66号」における①分類~⑤分類への当てはめにより、回収可能性の判断基準とするものであり、以下の場合には、純額の評価差損に係る繰延税金資産についても回収可能性があると判断されます。

(1)①(期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社)分類及び②(業績は安定しているが、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社)分類の場合

純額の評価差損に係る繰延税金資産につき、回収可能性があると判断します。

(2)③(業績が不安定であり、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社)分類及び④(重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社)分類のただし書きの会社

将来の合理的な見積可能期間(概ね5年)内の課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額を限度として、純額の評価差損に係る繰延税金資産を計上しているときは、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断します。

<設例>

1.原則的な処理

銘柄 売却予定 原価 時価 評価差額 税効果(※1)
資産 負債
A株式 あり 1,000 2,000 1,000 400
B株式 あり 1,000 500 △500 (※2)200
C株式 なし(※3) 1,000 1,300 300 120
D株式 なし(※3) 1,000 700 △300
  4,000 4,500 500 200 520

※1.法定実効税率は40%
※2.繰延税金資産は、回収可能と判断された。
※3.売却予定がなくスケジューリング不能であるため、繰延税金資産を計上できないと判断した。

仕訳

A株式

(借方) 投資有価証券 1,000   (貸方) 有価証券評価差額金 600
          繰延税金負債 400

B株式

(借方) 有価証券評価差額金 300   (貸方) 投資有価証券 500
  繰延税金資産 200        

C株式

(借方) 投資有価証券 300   (貸方) 有価証券評価差額金 180
          繰延税金負債 120

D株式

(借方) 有価証券評価差額金 300   (貸方) 投資有価証券 300

※回収不能として繰延税資産は計上しない

まとめ

(借方) 投資有価証券 500   (貸方) 有価証券評価差額金 180
  繰延税金資産 200     繰延税金負債 520

2.許容される処理

(1)スケジューリング可能なものとスケジューリング不能なものが混在している場合

銘柄 売却予定 原価 時価 評価差額 税効果(※1)
資産 負債 合計(※4)
A株式 あり(※2) 1,000 2,000 1,000 400 △400
B株式 あり(※2) 1,000 500 △500 200 200
C株式 なし(※3) 1,000 1,300 300 120 △120
D株式 なし(※3) 1,000 800 △200 80 80
  4,000 4,600 600 280 520 △240

※1.法定実効税率は40%
※2.売却予定ありの銘柄については、スケジューリング可能であり、いずれも回収可能と判断された。
※3.売却予定のない銘柄については、スケジュ-リング不能と判断した。
※4.税効果合計欄は、繰延税金負債に△。

① スケジューリング可能であり回収可能であると判断された銘柄

仕訳

A株式

(借方) 投資有価証券 1,000   (貸方) 有価証券評価差額金 600
          繰延税金負債 400

B株式

(借方) 有価証券評価差額金 300   (貸方) 投資有価証券 500
  繰延税金資産 200        
② スケジューリング不能と判断された銘柄

仕訳

(借方) 投資有価証券 100   (貸方) 有価証券評価差額金 60
          繰延税金負債 40

スケジューリング不能と判断された銘柄については、純額で評価差益となるので、繰延税金負債を認識します。

①と②の合計

仕訳

(借方) 投資有価証券 600   (貸方) 有価証券評価差額金 360
  繰延税金資産 200     繰延税金負債 440

(2)全てスケジューリング不能であり、純額で評価差損となる場合

ア.委員会報告66号 5.(1)の①及び②に該当する会社の場合

銘柄 売却予定 原価 時価 評価差額(※2) 税効果(※1)
資産 負債 合計(※3)
A株式 なし(※2) 1,000 800 △200 80 80
B株式 なし(※2) 1,000 500 △500 200 200
C株式 なし(※2) 1,000 1,100 100 40 △40
D株式 なし(※2) 1,000 700 △300 120 120
  4,000 3,100 △900 400 40 360

※1.法定実効税率は40%
※2.全ての銘柄の株式に売却予定はなく、スケジュ-リング不能と判断した
※3.税効果合計欄は、繰延税金負債に△

仕訳

(借方) 有価証券評価差額金 540   (貸方) 投資有価証券 900
  繰延税金資産 360        

委員会報告66号の①及び②分類に該当する場合には、純額の評価差損に係る繰延税金資産につき、回収可能性があると判断します。

イ.委員会報告66号 5.(1)の③及び④のただし書きに該当する会社の場合

前提:将来5年間の課税所得の見積額2,000

銘柄 売却予定 原価 時価 評価差額 税効果(※1)
資産 負債 合計(※3)
A株式 なし(※2) 1,000 800 △200 80 80
B株式 なし(※2) 1,000 500 △ 500 200 200
C株式 なし(※2) 1,000 1,100 100 40 △40
D株式 なし(※2) 1,000 700 △ 300 120 120
  4,000 3,100 △900 400 40 360

※1.法定実効税率は40%
※2.全ての一時差異はスケジュ-リング不能
※3.税効果合計欄は、繰延税金負債に△
※4.将来の合理的な見積可能期間(概ね5年)内の課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額を500とします。

仕訳

(借方) 有価証券評価差額金 700   (貸方) 投資有価証券 900
  繰延税金資産 (※5)200        

※5.純額の評価差損に係る繰延税金資産の総額=500×40%=200・・・・・・ ①

委員会報告66号の③及び④分類ただし書きに該当する場合には、将来の合理的な見積可能期間(概ね5年)内の課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額を限度として、純額の評価差損に係る繰延税金資産を計上することとなります。

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