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有形固定資産

第11回:業種別の固定資産会計

2017.03.10
新日本有限責任監査法人 公認会計士 蛇谷 光生
新日本有限責任監査法人 公認会計士 高野 昭二
【ポイント】
業種によって、保有する固定資産は異なるため、会計処理方法についても注意する点がそれぞれ異なります。

(業種別の固定資産とその会計処理の特徴)

業種 設備の特徴 会計処理の特徴
鉄鋼業 ① 1つの設備が高額なため大型修繕が必要
② 消耗の激しい部品がある
① 修繕引当金の計上
② 消耗品と固定資産の区分
石油業 ① 1つの設備が高額なため大型修繕が必要
② 販売店舗が多数存在する
① 修繕引当金の計上
② 販売店舗単位の減損損失および資産除去債務の検討
鉄道業 ① 個々の資産が密接に連携し、投資額も巨額
② 多額の工事負担金の存在
① 取替法による減価償却
② 圧縮記帳の検討
海運業 ① 船舶が高額なため、船舶ごとの資金調達を行い製造する
② 船舶の運航距離が明確に把握可能
① 船舶製造の調達資金の利息の原価算入の検討
② 運行距離比例法による減価償却費計算の検討
自動車部品製造業 企業独自の金型が多く使用されている 金型に関する減価償却費方法の検討
小売業 販売店舗が多数存在する 減損損失および資産除去債務の検討
不動産業 ① 販売用不動産を有する
② 土地と建物を多く有する
③ 賃貸用不動産を所有する
① 販売用不動産は棚卸資産に計上
② 土地建物の按分計算の検討
③ 賃貸用不動産の開示の検討

(1) 鉄鋼業

鉄鋼業などの装置産業では、一般的に大規模な製造活動を行うために金額的に重要な固定資産を保有しています。その生産過程において高炉や電炉をはじめとする複数の工程を必要としており、固定資産の金額的重要性が相対的に高い業種であるといえます。

そのような大規模な固定資産については、年に1回または複数回、製造ラインを休止して定期的な修繕や補修が行われているのが特徴です。その場合には、(特別)修繕引当金が計上されるケースが多いのも特徴です。したがって、大規模修繕に要する見積計算が適切に行われることが重要となります。

また、鉄鋼業においては機械装置である鉄鋼圧延用ロールについて、固定資産ではなく貯蔵品として会計処理されている慣行があります。鉄鋼圧延用ロールとは、鋼板を圧延加工するための機械であり、鋳造・鍛造に用いられることから消耗度が激しく、耐用年数ではなく減耗率などによって費用化している実務があります。税務上は耐用年数が1年以上の鉄鋼圧延用ロールは固定資産に計上すべきとされていますが、一方で耐用年数が1年以上であるかあるいは1年未満であるかについては、企業が自らこれを判定し、その判定の基礎を明らかにすることとしているため、会社として適切な管理資料を保存していくことが必要となります。

(2) 石油業

石油業については、装置産業である鉄鋼業と同様に、固定資産の金額的重要性が相対的に高い業種であるといえます。そのため原油タンクやボイラー、冷却塔等の定期修繕に応じて特別修繕引当金が計上されるケースが多いのが特徴となります。

一方で、石油製品販売会社については固定資産のほとんどが販売店舗であるサービス・ステーション(以下SSといいます)であり、SSについては個々の店舗単位が減損のグルーピングの対象となることが多いため注意が必要です。また、資産除去債務については、網羅性を把握することが非常に困難であり、かつSS施設の所有形態、所有するSS数やその規模によっては金額的にも多額になる可能性があることに注意が必要です。撤退中のSSに関する土壌調査結果のフォロー体制や、除去単価に過去実績等を使用している場合には、それを見直すべき事象の状況についても適切に把握することが必要となります。

(3) 鉄道業

鉄道業では、その事業の特性から、個々の資産が密接に連携しており、かつ投資額が巨額になる傾向にあります。鉄道業の特有の減価償却方法として、取替法が採用していることが挙げられます。取替法の対象となる資産はレール、枕木等、種類および品質を同じくする多量の資産からなる固定資産で、使用に耐えなくなった部分が毎年ほぼ同数量ずつ取り替えられるものです。取替資産の一部を新しい資産と取り替えた場合には、新しく取得した資産の取得原価は収益的支出として修繕費に計上されます。そのため、貸借対照表には旧資産の取得原価がそのまま計上し続けられることになります。計上されている取替資産については、税法に従って取得原価の50%に達するまで減価償却が行われていることも特徴的です。

また、路線の立体化、地下化などの公共性の高い工事については、地方公共団体などから多額の工事負担金等が交付されます。工事負担金等の会計処理方法については重要な会計方針としての開示が求められ、さらに圧縮記帳を行うにあたって直接減額法を採用した場合は工事負担金等の金額を注記することについても注意が必要です。

(4) 海運業

海運業では資産のうち船舶の占める比重が高く、船舶に係る会計処理が主な論点となります。一般的に船舶の製造コストは数十億円と多額になるため、船舶ごとに外部からの資金調達が行われることが考えられます。その場合、支払利息も多額となるため、これを原価に算入するかどうかの論点が生じます。企業間の比較可能性の観点からは、支払利息の原価算入について会計方針として注記することが適切です。

また、船舶の減価償却方法には、定額法・定率法のほか、一定の船舶について運行距離比例法が認められています(海運企業財務諸表準則)。具体的には、取得原価を船舶の生涯運行可能距離で除して算定された一定単位当たり金額に、各事業年度の実運航距離を乗じて減価償却費を算定する方法です。この方法は税法上も規定されています。

(5) 自動車部品製造業

自動車部品製造業の主な特徴は、他業種に比べて減価償却費の割合が多い点であり、その原因として金型を多く使用していることが考えられます。金型は、自動車のありとあらゆる部品を製造するために使用されており、かつ金型については企業のノウハウを使って自社で製造されることも多く、そのコストも多額になる傾向があります。金型の減価償却方法については、車種ごとの予定生産台数が決まっていることが多いため、生産台数を利用した生産高比例法の採用が最も会計上適している方法といえますが、実務上は簡便性の観点から、定額法・定率法が広く採用されています。

(6) 小売業

小売業では、主に遊休テナントに係る遊休資産の取扱いがポイントとなります。不採算店舗が自社所有物件の場合には、閉店後も速やかに処分できない場合は遊休資産となるリスクがあります。遊休資産の減価償却費は事業上利用している状態から外れるため、営業外費用として計上することに注意が必要です。

また、小売業では通常店舗単位で損益管理が行われていることから、減損会計の適用にあたって判断するグルーピングの単位は店舗単位となることが多いと考えられます。その場合、他業種に比べて減損損失を計上する頻度が高いことも小売業の特徴といえます。

さらに、多店舗展開を行っている小売業にとって、借地上に出店しているような店舗が多い場合、原状回復義務について適切に資産除去債務を認識する必要があります。小売業では、資産除去債務が多額となる傾向にあると考えられます。

(7) 不動産業

不動産業では、販売用の固定資産が棚卸資産に計上されている点が特徴的です。また、外部から不動産を取得した場合に、取得原価を土地と建物にどのように按分するかが重要な論点となります。一般的に不動産の購入金額は高額であるため、不動産鑑定評価書を入手することが多く、この評価額に基づいて取得原価を按分する方法が一般的です。不動産鑑定評価書を入手していない場合は、固定資産税評価額などの比率に基づいて按分することになります。

さらに、賃貸用不動産の取得にあたっては、①登録免許税、②司法書士報酬、③印紙税、④仲介手数料、⑤固定資産税・都市計画税の精算、⑥不動産取得税などの諸費用も必要な付随費用として取得原価に含まれることも不動産業の特徴です。ただし、第2回「取得原価の決定」にて説明したように、①登録免許税、②司法書士報酬、③印紙税については登記に関する費用として、取得原価に算入しないこともできます。賃貸用不動産については、賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準及び同適用指針により、時価を注記情報として開示することになります。詳細は解説シリーズ「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の概要」をご参照ください。


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