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ストック・オプション

第1回:会社法における取扱いと会計基準の概要

2007.11.27
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡

1. はじめに

平成17年12月に企業会計基準委員会より、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下、会計基準)及び企業会計基準第11号適用指針「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下、適用指針)が公表され、会社法が施行された平成18年5月以後に付与されるストック・オプション及び交付される自社の株式について適用されています。

2.会社法におけるストック・オプションの取り扱い

会社法においては、会計基準の処理に対応して、募集新株予約権について、「割当日」と「払込期日」を区分して、ストック・オプションを付与された者が、その割当日から新株予約権者になることを明らかにしました。ただし、払込金額が存在する場合については、払込期日までに払込金額全額の払い込みがなされない場合には、権利行使することができません(会社法第245条、第246条)。

また、新株予約権者は、株式会社の承諾を得れば、金銭の払い込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付し、又は当該株式会社に対する債権をもって相殺することができます(会社法第246条第2項)。

3.用語の定義

会計基準、及び適用指針においては、ストック・オプション特有の用語が数多く使用されています。ここでは、会計基準第2項における用語の定義をまとめます。

用語 定義
自社株式オプション 自社の株式(財務諸表を報告する企業の株式)を原資産とするコール・オプション(一定の金額の支払いにより、原資産である自社の株式を取得する権利)をいい、新株予約権はこれに該当する。
ストック・オプション 自社株式オプションのうち、特に企業がその従業員等に報酬として付与するものをいう。
従業員等 企業と雇用関係にある使用人のほか、企業の取締役、会計参与、監査役及び執行役ならびにこれに準ずる者をいう。
報酬 企業が従業員等から受けた労働や業務執行などのサービスの対価として、従業員等に給付されるものをいう。
行使価格 ストック・オプションの権利行使に当たり、払い込むべきものとして定められたストック・オプションの単位当たりの金額をいう。
付与日 ストック・オプションが付与された日をいい、会社法における募集新株予約権の割当日(会社法第238条第1項第4号)がこれに当たる。
権利確定日 権利の確定した日をいう。権利確定日が明らかではない場合には、原則として、権利行使期間の開始日の前日を権利確定日と見なす。
権利行使期間 ストック・オプションを付与された従業員等がその権利を行使できる期間をいう。
権利行使日 ストック・オプションを付与された者がその権利を行使したことにより、行使価格に基づく金額が払い込まれた日をいう。
対象勤務期間 ストック・オプションと報酬関係にあるサービスの提供期間であり、付与日から権利確定日までの期間をいう。
勤務条件 ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、従業員等の一定期間の勤務や業務執行に基づく条件をいう。
業績条件 ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、一定の業績(株価を含む)の達成または不達成に基づく条件をいう。
公正な評価額 市場価格に基づく価額をいう。市場価格がない場合でも、当該ストック・オプションの原資産である自社の株式の市場価格に基づき、合理的に算定された価額を入手できるときには、その価額は公正な評価額と認められる。
公正な評価単価 単位当たりの公正な評価額をいう。
失効 ストック・オプションが付与されたものの、権利行使されないことが確定することをいう。
公開企業 株式を証券取引所に上場している企業又はその株式が組織された店頭市場に登録されている企業をいう。
未公開企業 公開企業以外の企業をいう。
条件変更 付与したストック・オプションに係る条件を事後的に変更し、ストック・オプションの公正な評価単価、ストック・オプション数又は合理的な費用の計上期間のいずれか一つ以上を意図して変動させることをいう。

上記の用語のうち、時系列に関係する用語を図示すると、下記のとおりになります。

時系列に関係する用語を図示

4.適用する取引の範囲

会計基準は、以下の取引に対して適用します(会計基準第3項)。

  1. (1)企業がその従業員等に対しストック・オプションを付与する取引
  2. (2)企業が財貨又はサービスの取得において、対価として自社株式オプションを付与する取引であって、(1)以外のもの
  3. (3)企業が財貨又はサービスの取得において、対価として自社の株式を交付する取引

ストック・オプション取引の性質のうち会計的に重要な部分は、企業がサービス等を取得する際の対価として自社株式オプションを用いるという点であり、取得するサービスの相手方が従業員であるか否か、また、サービスの内容が労働サービスであるか否かは会計処理の観点からは問題となりません。よって、(2)のとおり、広い意味での自社株式オプションを対価として用いる取引を適用範囲としています。

また、財貨又はサービスの取得の対価として自社株式オプションに代わり自社株式を交付する取引の場合には、権利の行使や失効に係る会計処理の問題は生じません。しかし、対価の内容が自社株式の交付に結び付くという共通点があることから、財貨またはサービスの取得の対価として自社株式を交付した場合についても、上記(3)のとおり、会計基準・適用指針の適用範囲に含められています。


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