企業会計ナビ
「無形資産に関する論点の整理」について

第3回:測定と開示、繰延資産の取扱い

2010.05.14
新日本有限責任監査法人 ナレッジセンター
公認会計士 森さやか
|1|2次のページ

第3回では、認識された無形資産についての測定と開示、さらに繰延資産の取扱いについて解説を行うこととします。


I 【論点4】当初認識時の測定

1.【論点4-1】測定方法の考え方

無形資産を新たに取得した場合、当初認識時にどのように測定するかがここでは検討されています。

わが国の会計基準では、取得原価を基礎とした測定が求められています。一方、IAS第38号では「無形資産は取得原価で当初測定しなければならない」としています。ここでの「取得原価」は、「取得の際に支払われた現金または現金同等物の金額」を指しているものと考えられます。

【今後の方向性】

無形資産の当初取得時の帳簿価額は時価によるのではなく、原則として取得原価によることが考えられるとしています。自己創設の場合は、取得に際して支出した現金および現金同等物の金額に基づき測定することになり、無形資産を企業結合によって受け入れたときには、企業結合会計基準の定めに従うこととなるとしています。

2.【論点4-2】取得原価の範囲

無形資産の取得に関連した支出の具体的な範囲について検討しています。

【現行の取扱い】

わが国では実務上、無形資産に関しても有形固定資産を購入した場合と同様の考え方で処理していると考えられます。また、自家建設の有形固定資産については適正な原価計算基準に従って製造原価を計算し、これに基づいて取得原価を計算しています。

【国際的な会計基準の取扱い】

IAS第38号では、外部から購入した無形資産の取得原価の要素を①輸入関税や返還されない購入税を含み、取引による値引やリベートを控除した後の購入価格、②意図する利用のために資産を準備することに直接起因する原価の二つに区分しています。自己創設の無形資産の取得原価については、無形資産の認識要件を最初に満たした日以降に発生する支出の合計であるとしています。

さらに、無形資産の当初取得時の帳簿価額を構成しない事項と、発生時に費用として認識されるものを列挙しています。

【今後の方向性】

当初取得時の帳簿価額として取得原価を測定する場合の具体的な範囲については、原価計算基準に従って取り扱うことが考えられるとしています。この結果、無形資産の認識要件を満たした時点から、その制作を完了した時点までに支出した金額をもって当初取得時の帳簿価額とすることとしています。

また、取得原価に含めないものの項目を明示することも考えられ、さらに、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の考え方に従って一度費用として処理された額は、事後的に資産として計上できない旨を明確化することが考えられるとしています。


II 【論点5】当初認識後の測定

1.【論点5-1】基本的な考え方

論点整理は、取得原価から償却累計額および減損損失累計額を控除して計上する「原価モデル」を採用するとしています。

2.【論点5-2】償却に関する事項

IAS第38号では、無形資産の耐用年数が確定できるか確定できないかをまず査定するとされています。ここでは、耐用年数を確定できるものについて償却方法を検討し今後の方向性を示しています。

【今後の方向性】

論点整理では、無形資産は、耐用年数にわたり、当該無形資産に関する経済的便益について企業が消費すると予想されるパターンを反映した償却方法を選択することにより計画的、規則的に償却を行うことが考えられるとしています。

①耐用年数

耐用年数は、経営者の意図する使用方法、その他の関連する要因を検討して見積ることが考えられ、その際には、IAS第38号で耐用年数を決定する際に検討すべきとして列挙されている項目を考慮することが考えられるとしています。

②償却方法

償却方法については、採り得る償却方法、および当該無形資産に関する経済的便益について企業が消費すると予想されるパターンが明らかでない限りは定額法によることを明確にすることが考えられるとしています。

③残存価額

残存価額については、その決定についての考え方、および契約の存在など一定の条件を満たさない限りゼロとして扱うことを明確にすることが考えられるとしています。

3.【論点5-3】償却を行うことが適切でない無形資産

わが国では、電話加入権や借地権が減価償却資産に該当しないものとされていますが、IAS第38号では、無形資産が企業に対して正味キャッシュ・インフローをもたらすと期待される期間について予見可能な限度がない場合、当該無形資産の耐用年数は確定できないものとみなされなければならないとされており、このような耐用年数を確定できない無形資産は償却を行ってはならないとされています。

【検討と今後の方向性】

わが国においては、適切な期間損益計算を行う観点から、取得した資産について使用期間にわたり適切に費用配分することが重視されるため、時の経過または使用の程度に応じた価値の減少が想定される以上、耐用年数に予見可能な限度がないことを理由に償却を行わないという取扱いはこれまで行われていなかったと考えられますが、例えば不確定の期間にわたり独占的に認められた免許や権利等については、予見可能な範囲において経済的価値が失われないと見ることも考えられるとされています。

以上から、論点整理では、無形資産は原則として償却を行うこととするが、耐用年数を確定できないと判断される限りにおいては償却を行わないことが考えられるとしています。

また、単純に耐用年数の見積もりが困難であるとの理由では、耐用年数を確定できないものとはならない点を誤解のないように示す必要があることを踏まえ、耐用年数を確定できない無形資産である場合の追加的な規準を定めることが考えられるとしています。

【事例】

ASBJが調査した事例では、実務上計上されているものは、主としてブランドや商標に係るものであるとされています。

4.【論点5-4】償却を行わない無形資産の減損

ここでは、耐用年数を確定できない無形資産は償却を行わないとした場合に当該資産に関する減損会計の適用について検討しています。

【現行の取扱い】

わが国の減損会計基準では、減損の兆候が認められた場合には、帳簿価額と割引前将来キャッシュ・インフローを比較することにより、減損の認識の判定が行われます。減損を認識すべきと判定された場合には帳簿価額と回収可能価額(正味売却価額と割引後キャッシュ・インフローのいずれか大きい額)との差額を減損損失として測定します。このように計算された減損損失のその後の戻入処理は認められていません。

【国際的な会計基準の取扱い】

国際的な会計基準では、IAS第36号「資産の減損」に従い、当該資産の帳簿価額と回収可能価額とを比較することにより、①毎年および②当該無形資産に減損の兆候がある場合はいつでも減損テストを行う必要があるとされています。その結果、帳簿価額が回収可能価額より大きい場合、両者の差額が減損損失となります。また、のれん以外の資産について認識された減損損失について、減損損失を計上した以後の年度においてその損失が存在しないか減少していると認められる場合には戻入処理をしなければならないとされています。

【今後の方向性】

耐用年数を確定できないと判断してもその後状況が変わり有限と判断されることもあるため、IAS第36号でのように減損処理をより高い頻度で検討することは有用と考えられるとしています。耐用年数を確定できない無形資産は償却を行わないとしたときには、固定資産の減損に関するわが国の会計基準と国際的な会計基準との間の相違について、見直しの検討をすることが考えられるとしています。


|1|2次のページ