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セグメント情報等の開示に関する会計基準

第2回:報告セグメントの決定

2010.03.18
(2012.04.10 更新)
新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久

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1.報告セグメントの決定

セグメント情報の開示に当たって企業がまず対応しなければならないのが報告セグメントを決定することだと思われます。

報告セグメント決定の手続きとして、企業は事業セグメントを識別し、識別した事業セグメントを集約基準に基づいて集約し、集約された事業セグメントを量的基準に従って重要性のあるセグメントに絞り込むことにより開示すべき報告セグメントを決定します。報告セグメントの決定は、以下の決定手続により決定します。

【報告セグメントの決定手続】

(※画像をクリックすると拡大します。)


2.事業セグメントの識別

(1) マネジメント・アプローチの考え方

マネジメント・アプローチでは、経営者が経営上の意思決定を行い、また、業績を評価するために、企業の事業活動を区分した方法に基づいて、単一の区分方法によるセグメント情報を連結財務諸表または個別財務諸表に開示することにしています。セグメント会計基準では、当該目的で経営者の設定する企業の構成単位を「事業セグメント」といいます(セグメント会計基準6項、61項)。「事業セグメント」は、企業の構成単位で、次の要件のすべてに該当するものをいいます(セグメント会計基準6項)。

  1. 収益を稼得し、費用が発生する事業活動にかかわるもの(同一企業内の他の構成単位との取引に関連する収益および費用を含む)
  2. 企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、また、その業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するもの
  3. 分離された財務情報を入手できるもの

事業セグメントの要件を満たすセグメントの区分方法が複数ある場合の取り扱いとして、企業は各構成単位の事業活動の特徴、それらについて責任を有する管理者の存在および取締役会等に提出される情報などの要素に基づいて企業の事業セグメントの区分方法を決定するものとします(セグメント会計基準9項)。

また、連結財務諸表上、持分法を適用している関連会社(および非連結子会社)であっても企業の事業セグメントを構成することがあります。この場合にセグメント情報として開示する額は、当該企業の中で最高経営意思決定機関に報告されている金額の取り扱いに従って、連結損益計算書に計上されている持分法投資利益(または損失)の金額、持分法適用会社の財務情報の金額または当該財務情報の金額に持分割合を乗じた金額により行うことになります(セグメント適用指針4項)。

(2) 固定資産のグルーピングとの関係

事業セグメントを識別した結果、当該セグメントの範囲が固定資産のグルーピング単位に影響を及ぼす可能性があることに留意が必要です。

① 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第73項との関係

「連結財務諸表における資産グループは、どんなに大きくても、事業の種類別セグメント情報における開示対象セグメントの基礎となる事業区分よりも大きくなることはないと考えられる」としています。資産グループは、管理会計上の区分や投資に意思決定単位で行うことができると考えられていますが、大小関係に留意すべきです。

② 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第74項との関係

セグメントに当該資産グルーピングについては、事実関係の変化した場合を除き、翌期以降の会計期間においても同様に行うとされており(減損会計適用指針 7項、74項)、事実関係が変化した場合の例示として、セグメンテーションの方法等の変更などが挙げられています。

今回の、マネジメント・アプローチによる事業セグメントは、新しい会計基準に基づくもので、セグメンテーションの方法等の変更には該当しませんが、グルーピングの変更に影響を及ぼし、減損損失を認識するか否かの重要な局面に該当する場合は慎重な対応が望まれます。

3.集約基準

複数の事業セグメントが次の要件を満たす場合、企業は当該事業セグメントを一つの事業セグメントに集約することができます(セグメント会計基準11項)。

(1) 基本原則(セグメント会計基準4項)と整合していること

(2) 経済的特徴がおおむね類似していること

(3) 次のすべての要素がおおむね類似していること

①製品およびサービスの内容

②製品の製造方法または製造過程、サービスの提供方法

③製品およびサービスを販売する市場または顧客の種類

④製品およびサービスの販売方法

⑤銀行、保険、公益事業等のような業種に特有の規制環境

4.量的基準

会計基準では、報告セグメントを決定する際に考慮すべき一定の基準値を定めています。企業は、次の量的基準のいずれかを満たす事業セグメントを報告セグメントとして開示しなければならないとされています(セグメント会計基準12項)。

  1. (1)事業セグメント間の内部売上高または振替高を含む売上高がすべての事業セグメントの売上高の合計額の10%以上
  2. (2)利益または損失の絶対値が、①利益の生じているすべての事業セグメントの利益の合計額、または②損失の生じているすべての事業セグメントの損失の合計額の絶対値のいずれか大きい額の10%以上
  3. (3)資産がすべての事業セグメントの資産の合計額の10%以上
5.「その他」の区分について

報告セグメントの外部顧客への売上高の合計額が連結損益計算書または個別損益計算書(以下、損益計算書)の売上高の75%未満である場合には、損益計算書の売上高の75%以上が報告セグメントに含まれるまで、報告セグメントとする事業セグメントを追加して識別しなければなりません。従来のセグメント情報の開示では、「その他」として一括されたセグメントを除く開示の対象になった売上高合計額が連結損益計算書の50%以下である場合には、その理由を明らかにするとともに「その他」として一括されたセグメントについて一定の事項を開示していましたが、この扱いと比較しますと開示されるセグメントの対象範囲が広がったといえると考えます。


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