セグメント情報等の開示に関する会計基準
第3回:セグメント情報の開示
2010.04.26
新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久
1.セグメント情報の開示
セグメント情報等の開示に関する会計基準の第3回解説では、マネジメント・アプローチに基づく具体的な開示例を中心に取り上げます。セグメント適用指針に示されている開示例を基に開示上の留意事項を示します。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをお断り申し上げます。
2.具体的な開示例
(1) セグメント利益と営業利益の間の差異を調整する場合の開示例
(セグメント適用指針の開示例1より抜粋)
(セグメント情報)
1.報告セグメントの概要
- ①当社の報告セグメントは、当社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものである。
当社は、本社に製品・サービス別の事業本部を置き、各事業本部は、取り扱う製品・サービスについて国内及び海外の包括的な戦略を立案し、事業活動を展開している。
- ②したがって、当社は、事業本部を基礎とした製品・サービス別のセグメントから構成されており、「自動車部品事業」、「船舶事業」、「ソフトウェア事業」及び「電子事業」の4つを報告セグメントとしている。
- ③「自動車部品事業」は、自動車販売店に販売する自動車の交換部品を生産している。「船舶事業」は、海底採油産業などに販売する小型発動機船及び関連製品を生産している。「ソフトウェア事業」は、コンピュータ製造業者及び販売店に販売するソフトウェア及び関連製品を生産している。「電子事業」は、コンピュータ製造業者に販売する集積回路及び関連製品を生産している。
【開示上のポイント】
報告セグメントの概要について説明しています。報告セグメントは、事業セグメントを識別したものをまとめたものです。事業セグメントの識別の要件は、以下のとおりです(セグメント会計基準6項)。
- (i) 収益を稼得し、費用が発生する事業活動にかかわるもの
- (ii) 企業の最高経営意思決定機関が、当該構成単位に配分すべき資源に関する意思決定を行い、その業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するもの
- (iii)分離された財務情報を入手できるもの
【セグメント会計基準の関連規定】
- ①報告セグメントの決定方法を説明しています(セグメント会計基準18項(1))。
- ②製品・サービス別の報告セグメントの区分を説明しています(セグメント会計基準18項(1))。
- ③各報告セグメントに属する製品およびサービスの種類を説明しています(セグメント会計基準18項(2))。
2.報告セグメントの利益(又は損失)、資産及び負債等の額の測定方法
- ④報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、棚卸資産の評価基準を除き、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と概ね同一である。
- ⑤棚卸資産の評価については、収益性の低下に基づく簿価切下げ前の価額で評価している。報告セグメントの利益は、営業利益(のれん償却前)ベースの数値である。セグメント間の内部収益及び振替高は市場実勢価格に基づいている。
【開示上のポイント】
マネジメント・アプローチに基づくセグメント情報において、企業は各報告セグメントの利益(または損失)の額を開示しなければならないとされています(セグメント会計基準19項)しかし、その利益の算定方法は会計基準においても特に示されてなく、最高意思決定機関に報告される金額に基づくものとされています(セグメント会計基準23項、78項)。また、損益計算書と異なる会計処理を採用した場合には、必要に応じてその主な内容を開示することになり、さらに、各報告セグメントの利益(または損失)の合計額と損益計算書の利益(または損失)計上額の差異調整に係る事項を開示する必要があります(セグメント会計基準25項(2))。
【セグメント会計基準の関連規定】
- ④セグメント情報の各開示項目の測定に関する内容について説明しています。
報告されているセグメント情報を作成する会計処理と連結財務諸表を作成するための会計処理の方法に違いがあるため、その内容を説明しています(セグメント会計基準第24項(2))。
- ⑤報告セグメント利益について棚卸資産の評価については、簿価引き下げ前の価額で評価している旨、セグメント利益については、営業利益を基礎としている旨を記載しています(セグメント会計基準第26項)。また、報告セグメント間取引について会計処理の基礎となる事項を記載しています(セグメント会計基準第24項(1))。
3.報告セグメントの利益(又は損失)、資産及び負債に関する情報
(単位:百万円)
売上高 |
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外部顧客に対する売上高 |
3,000 |
5,000 |
9,500 |
12,000 |
1,000 |
- |
30,500 |
セグメント間の内部売上高又は振替高 |
- |
- |
3,000 |
1,500 |
- |
△4,500 |
- |
計 |
3,000 |
5,000 |
12,500 |
13,500 |
1,000 |
△4,500 |
30,500 |
セグメント利益(※2) |
200 |
70 |
900 |
2,300 |
100 |
△2,050 |
1,520 |
セグメント資産(※2) |
2,000 |
5,000 |
3,000 |
12,000 |
2,000 |
500 |
24,500 |
セグメント負債(※2) |
1,050 |
3,000 |
1,800 |
8,000 |
- |
5,000 |
18,850 |
その他の項目 |
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減価償却費 |
200 |
100 |
50 |
1,000 |
50 |
50 |
1,450 |
有形固定資産及び無形固定資産の増加額 |
300 |
700 |
500 |
800 |
- |
1,000 |
3,300 |
(注)
- その他には、不動産事業、電子機器レンタル事業、ソフトウェア・コンサルティング事業及び倉庫リース事業等を含んでいる。
- 調整額は、以下のとおりである。(※3)
- (1)セグメント利益の調整額△2,050百万円には、セグメント間取引消去△500百万円、のれんの償却額△550百万円、各報告セグメントに配分していない全社費用△950百万円及び棚卸資産の調整額△30百万円が含まれている。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費及び技術試験費である。
- (2)セグメント資産の調整額500百万円には、本社管理部門に対する債権の相殺消去△900百万円、各報告セグメントに配分していない全社資産1,500百万円及び棚卸資産の調整額△30百万円が含まれている。
- (3)セグメント負債の調整額5,000百万円は、本社の長期借入金である。
- (4)有形固定資産及び無形固定資産の増加額の調整額1,000百万円は、本社建物の設備投資額である。
- セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っている。(※3)
- ※1報告セグメントで開示されているセグメント情報の数値と連結財務諸表計上額の差異調整額を記載します(セグメント会計基準17項(3)、25項、26項)。
- ※2最高意思決定機関に報告されるセグメントの利益、資産、負債の金額が開示されます(セグメント会計基準19項、20項)。セグメント利益、資産の開示については、必須とされていますが、セグメント負債については、最高意思決定機関に対して定期的に提供され使用されている場合に開示されます(セグメント会計基準20項)。
- ※3報告セグメントの利益が、財務諸表の損益計算書の利益と差異がある場合、差異調整に関する事項を開示します。この場合の損益計算書の利益とは、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益のいずれかとし、当該科目を開示します(セグメント会計基準17項(3)、25項、26項)。
本開示例では、報告セグメントの利益は、営業利益が採用されており、報告されているセグメントの営業利益と連結財務諸表の営業利益の差異調整額を説明しています。その他、各報告セグメント情報と対応する連結財務諸表の各開示項目の調整額を説明しています。
4.地域に関する情報
(1) 売上高
(単位:百万円)
19,000 |
4,200 |
3,400 |
2,900 |
1,000 |
30,500 |
(注)売上高は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類している。
(2) 有形固定資産
(単位:百万円)
11,000 |
4,500 |
1,500 |
1,000 |
18,000 |
- 国内の外部顧客への売上高と海外の外部顧客への売上高を開示します(セグメント会計基準31項(1))。
- 国内に所在する有形固定資産の額と海外に所在する有形固定資産の額を開示します(セグメント会計基準31項(2))。
5.主要な顧客に関する情報
(単位:百万円)
○○販売(株) |
5,000 |
ソフトウエア事業、電子事業 |
(注)売上高は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類している。
- 主要な顧客がある場合には、その旨、当該顧客の名称又は氏名、当該顧客への売上高および当該顧客との取引に関連する主な報告セグメントの名称を開示します(セグメント会計基準32項)。
(減損損失)
固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報
(単位:百万円)
減損損失 |
- |
500 |
200 |
- |
50 |
- |
750 |
(注)その他の金額はすべて不動産事業に係る金額である。
- 固定資産の減損損失を計上した場合は、報告セグメント別の内訳を開示します(セグメント会計基準33項)。
- 報告セグメントに配分されていない減損損失がある場合には、その額およびその内容を記載します。
(のれん)
のれんに関する報告セグメント別情報
(単位:百万円)
当期償却費 |
- |
- |
- |
500 |
50 |
- |
550 |
当期末残高 |
- |
- |
- |
1,500 |
100 |
- |
1,600 |
(注)その他の金額はすべて不動産事業に係る金額である。
- 損益計算書にのれんの償却額または負ののれんの償却額を計上している場合には、償却額および未償却残高に関する報告セグメント別の内訳をそれぞれ開示します(セグメント会計基準34項)。
- 報告セグメントに配分されていないのれんまたは負ののれんがある場合には、その償却額および未償却残高ならびにその内容を記載します。

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