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退職給付(平成24年改正会計基準)

第6回:年金資産と期待運用収益

2014.01.29
新日本有限責任監査法人 公認会計士 牧野 幸享

1. 年金資産・退職給付信託

(1)年金資産とその要件

年金資産とは、特定の退職給付制度のために、その制度について企業と従業員との契約(退職金規程等)等に基づき積み立てられた、次の全てを満たす特定の資産をいいます(平成24年改正会計基準7項)。

  • (i)退職給付以外に使用できないこと
  • (ii)事業主及び事業主の債権者から法的に分離されていること
  • (iii)積立超過分を除き、事業主への返還、事業主からの解約・目的外の払出し等が禁止されていること
  • (iv)資産を事業主の資産と交換できないこと

厚生年金基金制度及び確定給付企業年金制度において保有する資産は年金資産に当たるが、年金資産として適格な資産とは、退職給付の支払に充当できる資産であるため、厚生年金基金制度及び確定給付企業年金制度における業務経理に係る資産は年金資産に含まれません(平成24年改正適用指針17項)。

(2)信託を用いる場合の年金資産

年金資産として退職給付(退職一時金及び退職年金)目的の信託(以下、退職給付信託)を用いることができます。
退職給付信託が年金資産として認められるためには、以下の全ての要件を満たす必要があります(平成24年改正適用指針18項)。

(i)当該信託が退職給付に充てられるものであることが退職金規程等により確認できること
(ii)当該信託は信託財産を退職給付に充てることに限定した他益信託であること
(iii)当該信託は事業主から法的に分離されており、信託財産の事業主への返還及び事業主による受益者に対する詐害的な行為が禁止されていること
(iv)信託財産の管理・運用・処分については、受託者が信託契約に基づいて行うこと

(3)年金資産の評価

年金資産の額は、期末における時価により計算します(平成24年改正会計基準22項)。
時価とは、公正な評価額をいい、資産取引に関し十分な知識と情報を有する売り手と買い手が自発的に相対取引するときの価格によって資産を評価した額をいいます(平成24年改正適用指針20項)。

(4)年金資産が退職給付債務を超える場合の処理

連結財務諸表上は、年金資産の額が退職給付債務を超える場合には、「退職給付に係る資産」等として固定資産に計上します(平成24年改正会計基準13項、27項)。
一方、個別財務諸表上は、年金資産については、その額が退職給付債務に未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を加減した額を超える場合には、「前払年金費用」等の適当な科目をもって固定資産に計上します(平成24年改正会計基準39項)。
ただし、複数の退職給付制度、例えば退職一時金制度と企業年金制度を持っている場合、企業年金制度において積立超過となり前払年金費用が生じても、退職一時金制度における退職給付債務から控除することはできません(平成24年改正会計基準 注1)。この場合、連結貸借対照表上、「退職給付に係る資産」と「退職給付に係る負債」(個別貸借対照表上は、「前払年金費用」と「退職給付引当金」)が両建計上されることになります。

2. 期待運用収益

期待運用収益は、年金資産の運用により生じると合理的に期待される計算上の収益をいい(平成24年改正会計基準10項)、期首の年金資産の額に合理的に期待される収益率(長期期待運用収益率)を乗じて計算されます(平成24年改正基準第23項)。

期待運用収益=期首の年金資産×長期期待運用収益率
※ただし期中に年金資産の重要な変動があった場合には、これを反映させます(平成24年改正適用指針第21項)。

3. 年金資産の返還に伴う会計処理

年金資産が退職給付債務を超過した場合、年金掛金の減少又は剰余金として企業に返還される場合がありますが、返還に当たっては、返還される予定の資産及び返還されなかった資産とも、平成24年改正会計基準7項の年金資産としての全ての要件を満たすことが必要です(平成24年改正適用指針44項)。

年金資産が事業主へ返還された場合には、返還額を事業主の資産の増加と退職給付に係る資産の減少(又は退職給付に係る負債の増加)として処理します(平成24年改正適用指針45項)。
また、返還前の年金資産に占める返還額の割合が重要な場合には、返還時点における年金資産に係る未認識数理計算上の差異のうち、当該返還額に対応する金額については、一時の費用としない理由は失われているものと考えられることから、当該差異の重要性が乏しい場合を除き、返還時に損益として認識します。この場合、返還された年金資産に個別に対応する未認識数理計算上の差異が明らかであれば、当該対応額を損益に計上し、返還された年金資産に個別に対応する未認識数理計算上の差異を特定することが困難であれば、返還時の年金資産の比率等により合理的に按分した金額を損益に計上します(その他の包括利益の組替調整となります)。

退職給付(平成24年改正会計基準)

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