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退職給付(平成24年改正会計基準)

第4回:退職給付制度の概要

2014.01.16
新日本有限責任監査法人 公認会計士 牧野 幸享

1. 退職給付とは

退職給付とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に支給される給付をいいます(平成24年改正会計基準3項)。退職一時金、退職年金等がその典型です。

退職給付の支給方法(一時金支給、年金支給)や退職給付の積立方法(内部積立、外部積立)が異なっているとしても、いずれも退職給付であることに違いはありません。なお、退職給付の性格に関して、賃金後払説、功績報償説、生活保障説といった考え方がありますが、退職給付に関する会計基準上は、退職給付は基本的に労働協約等に基づいて従業員が提供した労働の対価として支払われる賃金の後払いであると捉えています(平成24年改正会計基準53項)
退職給付制度は、以下のとおり確定給付制度と確定拠出制度に区分され、それぞれ会計処理が異なります。確定給付制度を採用した場合、実質的に企業が長期債務を有することになり、計算された退職給付債務等を基礎として退職給付に係る負債の計上が必要になります。確定拠出制度を採用した場合、将来の退職給付について拠出以後に追加的な負担が生じないため、要拠出額を支払った時点で退職給付費用となり、退職給付に係る負債は計上されません。

分類 内容
確定給付制度 確定拠出制度以外の退職給付制度
退職一時金制度、厚生年金基金制度、確定給付企業年金制度等があります。
確定拠出制度 一定の掛金を外部に積み立て、事業主である企業が、当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負わない退職給付制度
確定拠出年金制度、中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度等があります。

2. 確定給付制度

(1)退職一時金制度

退職一時金制度とは、退職給付に対して外部積立を行わず、内部積立のみをもって一時金を支払う制度のことです。退職一時金は通常、就業規則等の退職金規程に基づき支払われます。
内部積立のみということは、退職給付の原資となる資産はすでに貸借対照表の資産の部に計上されていることになるので、後述する年金資産のような会計処理は必要ありません。

(2)厚生年金基金制度

厚生年金基金制度とは、企業が厚生年金基金を設立し、国の厚生年金保険の一部を代行するとともに、企業が独自の給付を上乗せする制度のことです。
厚生年金基金制度においては、老齢厚生年金の報酬比例部分について国に代行して基金から支給することに加え、企業の実態に合わせて企業独自の給付を上乗せして支給するため、より手厚い給付金が確保されます。なお、給付形態には加算型、代行型及び共済型があります。
厚生年金基金制度によると、企業が負担する掛金が全額損金算入でき、従業員が負担する掛金は所得税の社会保険料控除の対象になるという税務上のメリットがあります。

(3) 確定給付企業年金制度

確定給付企業年金制度とは、確定給付企業年金法(平成14年4月施行)に基づいて定められた確定給付型の年金制度です。確定給付企業年金法は、確定給付型の年金について受給権保護等を図るために制定された法律で、積立基準、受託者責任、情報開示等統一的な基準を定めるとともに、厚生年金基金については、厚生年金の代行を行わない他の企業年金制度への移行を認めることなどが定められています。確定給付企業年金制度には、規約型企業年金と基金型企業年金の二つの種類があります。

3.確定拠出制度

(1)確定拠出年金制度

確定拠出年金制度とは、従業員のために企業が、又は従業員が自身のために掛金を拠出して、退職時に年金などで受け取る制度です。この制度の特徴は、拠出した加入者自身が自ら選択した保険会社等の運用機関に運用の指示をし、運用実績次第で受け取る年金額が変動する点です。

確定拠出年金には企業型と個人型の二つの種類に分類されます。なお、それぞれにより、拠出の限度額、拠出の方法等が異なることになります。

分類 内容
企業型 企業が従業員のために掛金を拠出します。掛金は企業にとって損金算入が認められます。
個人型 確定拠出年金、厚生年金基金等を採用していない企業の従業員が自身のために確定拠出年金制度に加入し掛金を拠出します。掛金は所得税の社会保険料控除の対象となります。

(2)中小企業退職金共済制度

中小企業退職金共済制度とは、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。これは独自で退職金制度を構築するのが難しい中小企業の従業員に対する制度です。 企業が中小企業退職金共済事業本部(以下、中退共)と退職金共済契約を締結し、掛金を金融機関に拠出します。従業員が退職した際には、中退共から退職金が直接支払われることになります。
加入要件は、企業の業種、従業員数、資本金等により定められており、掛金についても選択できるようになっています。
また、企業が負担する掛金は全額損金算入できるという税務上のメリットがあります。

(3)特定退職金共済制度

特定退職金共済制度とは、商工会議所等が、所得税法上の「特定退職金共済団体」を設立し、これを基礎として国の承認を得て退職金の積立を行う制度です。
加入要件は、商工会議所の会員企業又は地区内に事務所があることであり、企業の業種、従業員数、資本金等に定めはありません。
中小企業退職金共済制度との併用が可能な点もその特徴です。

4.退職給付に係る負債の内訳

平成24年改正会計基準の適用後は、連結財務諸表と個別財務諸表で取扱いが異なることになります。

連結財務諸表では、退職給付債務から年金資産の額を控除した額(積立状況を示す額)を「退職給付に係る負債」として計上します。ただし、年金資産の額が退職給付債務を超える場合には、「退職給付に係る資産」として計上します。(平成24年改正会計基準13項、27項)

【連結】
(下の図をクリックすると拡大します。)

一方、個別財務諸表では改正前と同様に、退職給付債務から年金資産を控除したものに、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を加減した額が退職給付引当金(資産として計上される場合は「前払年金費用」)となります(平成24年改正会計基準39項)。数理計算上の差異や過去勤務費用は、必ずしも発生年度に全額が費用処理されるわけではありません。そのため、貸借対照表や損益計算書に反映されていない残高が生じることがあり、これを未認識項目としています。
数理計算上の差異は年度ごと、過去勤務費用は退職給付水準の改訂等の発生時に把握されますが、借方項目、貸方項目のいずれにも発生します。

【個別】
(下の図をクリックすると拡大します。)

5.損益計算書及び包括利益計算書上での取扱い

平成24年改正会計基準の適用後も、損益計算書の当期純利益への影響はありません。
退職給付費用は(1)勤務費用(2)利息費用(3)数理計算上の差異の費用処理額(4)過去勤務費用の費用処理額、及び(5)期待運用収益で構成されています(平成24年改正会計基準14項)。
数理計算上の差異の費用処理額と過去勤務費用の費用処理額は、借方項目、貸方項目のいずれにも発生します。
退職給付費用は通常、費用(借方項目)として計上されますが、未認識項目の処理額や期待運用収益の金額によっては、収益(貸方項目)が計上される場合もあります。

一方、連結包括利益計算書においては、数理計算上の差異等の当期発生額のうち、費用処理されない部分(未認識数理計算上の差異となる部分)については、「退職給付に係る調整額(その他の包括利益)」として計上されることとなります。また、その他の包括利益累計額に計上されている未認識数理計算上の差異等のうち、当期に費用処理された部分については包括利益計算書において、その他の包括利益の調整(組替調整)を行います(平成24年改正会計基準15項)。
なお、上記の処理に当たっては税効果を調整します。

より詳細な数値イメージについては、第3回「仕訳例(平成24年改正会計基準等)」をご参照ください。

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