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退職給付(平成24年改正会計基準)

第3回:仕訳例(平成24年改正会計基準等)

2013.12.24
新日本有限責任監査法人 公認会計士 鯵坂雄二郎
新日本有限責任監査法人 公認会計士   牧野    幸享

1. はじめに

この回では、平成24年改正会計基準等に関連する仕訳のイメージを掴むために、以下の2つを確認します。

  • 適用初年度の仕訳例
  • 企業年金制度の仕訳例(個別財務諸表における当面の取扱いを含む)

なお便宜上、各仕訳で下記の略称を使用します。

B/S:貸借対照表科目(AOCIを除く)
AOCI:その他の包括利益累計額
P/L:損益計算書科目
OCI:その他の包括利益
S/S:株主資本等変動計算書

2. 適用初年度の仕訳例

(1)前提条件

①平成24年改正会計基準第34項の定めをX2年4月1日から開始する事業年度の年度末の財務諸表から適用

②平成24年改正会計基準第35項の定めをX3年4月1日から開始する事業年度の期首から適用

③平成24年改正会計基準第35項の適用の結果、次の会計処理の変更が生じる
退職給付制度について、前年度(X3年3月期)までは期間定額基準を適用していたが、平成24年改正会計基準の適用に伴い、同基準第19項(2)に定められた給付算定式基準に変更(割引率、予定昇給率の変更は無視)

④X3年3月31日における退職給付見込額の期間帰属方法、及び退職給付債務の額は、平成24年改正会計基準の適用前後で次のとおり

  平成24年改正会計基準
適用前
平成24年改正会計基準
適用後
退職給付見込額の
期間帰属方法
期間定額基準 給付算定式基準
退職給付債務
(実際計算の値)
1,000 900

⑤X3年3月31日における、平成24年改正会計基準適用前の退職給付引当金の金額と、その内訳

退職給付債務 (1,000)
年金資産 700
積立状況を示す額 (300)
未認識数理計算上の差異 100
退職給付引当金 (200)

⑥法定実効税率35%(繰延税金資産の回収可能性あり)

(2) 平成24年改正会計基準第34項の適用初年度の年度末(X3年3月31日)

①個別財務諸表
a.勘定内訳

b.仕訳(個別財務諸表)
(平成24年改正会計基準第39項)

追加の仕訳なし  

②連結財務諸表
a.勘定内訳(連結財務諸表)

b.仕訳(連結財務諸表)
(連結修正仕訳。平成24年改正会計基準第34項の適用前における未認識項目の純資産の部での認識。)
(借)
B/S
退職給付引当金
200  
(貸)B/S
退職給付に係る負債
300
AOCI
退職給付に係る調整累計額(*1)
(その他の包括利益累計額)
100        
(借)
B/S
繰延税金資産(*2)
35  
(貸)AOCI
退職給付に係る調整累計額
(その他の包括利益累計額)
35
(*1)未認識数理計算上の差異100
(「その他の包括利益」を通さず、直接、純資産の部における「その他の包括利益累計額」に計上)
(*2)上記の金額×法定実効税率35%

(3)平成24年改正会計基準第35項の適用初年度の期首(X3年4月1日)
※ここでは連結財務諸表を前提に示します。

①連結財務諸表
a.勘定内訳(連結財務諸表)

b.仕訳(連結財務諸表)
(平成24年改正会計基準第35項の適用による、退職給付債務の変動の反映)
(借)B/S 退職給付に係る負債(*1) 100   (貸)S/S 利益剰余金 100
(借)S/S 利益剰余金 35   (貸)B/S 繰延税金資産(*2) 35
(*1)平成24年改正会計基準適用前の退職給付債務1,000-平成24年改正会計基準適用後の退職給付債務900
(*2)上記の金額×法定実効税率35%

3.企業年金制度の仕訳例(個別財務諸表における当面の取扱いを含む)

(1)前提条件

①従業員非拠出の確定給付企業年金制度を採用

②数理計算上の差異の費用処理については、当期の発生額を翌期から費用処理期間5年の定額法(0.200)で費用処理する方法を採用(X3/4/1の未認識数理計算上の差異100は、全額がX3/3/31期に発生)

③税効果については、その他の包括利益に関連するものだけを示す

④法定実効税率35%(繰延税金資産の回収可能性あり)

⑤設例で用いている記号は次のとおり

S : 勤務費用 I : 利息費用
R : 期待運用収益
AGL: 数理計算上の差異の発生額 A : 数理計算上の差異の費用処理額
P : 年金又は退職金支払額 C : 掛金拠出額

(2)X4/3/31期の会計処理

①個別財務諸表
【追加の前提】
個別財務諸表上の「退職給付引当金」の関連数値は以下のとおり。


a.勘定内訳

b.仕訳(個別財務諸表)
退職給付費用の計上
(借)P/L
退職給付費用
100  
(貸)B/S
退職給付引当金
100
未認識数理計算上の差異の費用処理
(借)P/L
退職給付費用
20  
(貸)B/S
退職給付引当金
20
掛金拠出時における処理
(借)B/S
退職給付引当金
100  
(貸)B/S
現金及び預金
100
②連結財務諸表
【追加の前提】
連結財務諸表上の「退職給付に係る負債」の関連数値は以下のとおり。


a.勘定内訳(連結財務諸表)

(※1) 過去に一度「その他の包括利益」として認識したものについて、当期純利益の計算にあらためて含める

b.仕訳(連結財務諸表)
■未認識数理計算上の差異の費用処理(組替調整)

①個別財務諸表上の処理の振戻し
(借)B/S
退職給付引当金
20  
(貸)P/L
退職給付費用
20

(注)個別財務諸表上で退職給付引当金に係る繰延税金資産を計上している場合、上記仕訳の退職給付引当金20に係る繰延税金資産7(=20×35%)を併せて振戻すことになると考えられます。

②組替調整の処理
(借)P/L
退職給付費用
20  
(貸)OCI
退職給付に係る
調整額
20
(借)OCI
退職給付に係る
調整額
7  
(貸)P/L
法人税等調整額
7
■期末における数理計算上の差異の処理
(借)OCI
退職給付に係る
調整額
200  
(貸)B/S
退職給付に係る
負債
200
(借)B/S
繰延税金資産
70  
(貸)OCI
退職給付に係る
調整額
70
■「退職給付に係る調整累計額」への振替
(借)AOCI
退職給付に係る調整累計額
(その他の包括利益累計額)
117  
(貸)OCI
退職給付に係る調整額
117
■個別財務諸表上の「退職給付引当金」と、連結財務諸表上の「退職給付に係る負債」の関係
退職給付引当金(個別) (120)
   
未認識数理計算上の差異(期首) (100)
未認識数理計算上の差異(費用処理額) 20
未認識数理計算上の差異(発生額) (200)
   
退職給付に係る負債(連結) (400)

以上

退職給付(平成24年改正会計基準)

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