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退職給付(平成10年会計基準)

第2回:退職給付債務と勤務費用・利息費用

2010.09.17
新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子
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1.退職給付債務とは

退職給付債務は、退職時に見込まれる退職給付の総額(以下、退職給付見込額)のうち、期末までに発生していると認められる額をいいます。退職給付債務は一定の割引率および予想される退職時から現在までの期間(以下、残存勤務期間)に基づき割り引いて計算されます(退職給付会計基準二2(1))。
退職給付債務は、原則として個々の従業員ごとに計算されます。ただし、勤続年数、残存勤務期間、退職給付見込額等について標準的な数値を用いて加重平均等により合理的な計算ができると認められる場合には、当該合理的な計算方法を用いることができます(退職給付会計基準 注解(注2))。
この場合の「合理的な計算方法」としては、従業員を年齢、勤務年数、残存勤務期間および人事コースなどによりグルーピングし、当該グループの標準的な数値を用いて計算する方法が考えられます。

2.退職給付債務の計算手法

退職給付債務は、以下の手順により計算します。

  • (1)退職時に見込まれる退職給付の総額(退職給付見込額)の計算
  • (2)退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額の計算
  • (3)期末までに発生していると見積もられる金額の割引計算
退職給付債務=退職給付見込額× 現在時点までの勤務期間
退職時点までの勤務期間
×割引計算
(期間定額基準を採用したケース)

(1)退職時に見込まれる退職給付の総額(退職給付見込額)の計算

退職給付見込額は、予想退職時期ごとに、従業員に支給される一時金見込額および退職時点における年金現価の見込額に退職率および死亡率を加味して計算します。退職給付見込額の計算において、退職事由(自己都合退職、会社都合退職等)や支給方法(一時金、年金)により給付率が異なる場合には、原則として、退職事由および支給方法の発生確率を加味して計算し、合理的に見込まれる退職給付の変動要因を考慮して見積もらなければならないとされています。
退職給付見込額の見積もりにおいて合理的に見込まれる退職給付の変動要因には確実に見込まれる昇給等が含まれるものとされています。また、臨時に支給される退職給付等であってあらかじめ予測できないものは、退職給付見込額に含めないものとされています(退職給付会計基準 注解(注3))。

退職給付見込額=一時金見込額・年金現価見込額(※)×(退職確率+死亡確率)
※年金現価見込額=現在給与×昇給率×退職時支給率

(2)退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額の計算

算定した退職給付見込額のうち、期末までに発生していると認められる額を計算します。退職給付見込額のうち当期までに発生したと認められる額を見積もる方法は、以下の四つの方法があります(退職給付会計実務指針2(2))。

種類 内容
a.期間定額基準(原則) 退職給付見込額を全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法
b.給与基準 退職給付見込額のうち、全勤務期間における給与総支給額に対する各期の給与額の割合に基づいた額を各期の発生額とする方法
c.支給倍率基準 退職給付見込額のうち、全勤務期間における支給倍率に対する各期の支給倍率の増加額の割合に基づいた額を各期の発生額とする方法
d.ポイント基準 退職給付見込額のうち、全勤務期間におけるポイントに対する各期のポイントの増加分の割合に基づいた額を各期の発生額とする方法

期末までに発生していると認められる額=退職給付見込額× 現在時点までの勤務期間
退職時点までの勤務期間
(期間定額基準を採用したケース)

(3)期末までに発生していると見積もられる金額の割引計算

期末までに発生していると見積もられる金額を割引計算します。
予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額を、一定の割引率を用いてそれぞれの残存勤務期間にわたって現在価値に割り引き、当該割り引いた金額を合計して、退職給付債務を計算します。従業員が受給する年金予想額の退職時点の現価を計算するに当たっては、退職給付債務の計算に用いる割引率と同じ割引率を用いて計算します(退職給付会計実務指針2(3))。

3.勤務費用

勤務費用とは、1期間の労働の対価として発生したと認められる退職給付をいい(退職給付会計基準一3)、退職給付見込額のうち当期に発生したと認められる額を一定の割引率および残存勤務期間に基づき割引計算します(退職給付会計基準三2(1))。なお、従業員からの拠出がある企業年金制度を採用している場合には、勤務費用の計算に当たり、従業員からの拠出額を勤務費用から差し引くものとされています(退職給付会計基準 注解(注8))。勤務費用は、退職給付債務の計算に準じて、以下の手順により計算します(退職給付会計実務指針4項)。

(1)退職時に見込まれる退職給付の総額(退職給付見込額)の計算

退職給付見込額は、退職給付債務の計算において用いた額です。

(2)退職給付見込額のうち当期において発生すると認められる額の計算

予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち、当期において発生すると認められる額を計算します。当期において発生すると認められる額は、退職給付債務の計算において用いた方法と同一の方法により、当期分について計算します。

(3)勤務費用の計算

予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち当期に発生すると認められる額を、一定の割引率を用いて残存勤務期間にわたって現在価値に割り引きます。当該割り引いた金額を合計して、勤務費用を計算します。

勤務費用=退職給付見込額× 当期勤務期間
退職時点までの勤務期間
×割引計算
(期間定額基準を採用したケース)

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