企業会計ナビ
退職給付(平成10年会計基準)

第1回:退職給付制度の概要

2010.09.10
新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子
|1|2次のページ

1.退職給付とは

退職給付とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以降に従業員に支給される給付をいい、退職一時金および退職年金等がその典型です(退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書三1)。
退職給付の支給方法(一時金支給、年金支給)や退職給付の積立方法(内部引当、外部積立)が異なっているとしても、いずれも退職給付であることに違いはありません。なお、退職給付の性格に関して、賃金後払説、功績報償説、生活保障説といった考え方がありますが、退職給付に係る会計基準上は、退職給付は基本的に労働協約等に基づいて従業員が提供した労働の対価として支払われる賃金の後払いであるととらえています(退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書三2)。
退職給付制度は、以下のとおり確定給付型と確定拠出型に区分され、それぞれ会計処理が異なります。確定給付型の退職給付制度を採用した場合、実質的に企業が長期債務を有することになり、計算された退職給付債務等を基礎として退職給付引当金の計上が必要になります。確定拠出型の退職給付制度を採用した場合、要拠出額を支払った時点で退職給付費用となり、退職給付引当金は計上されません。

分類 内容
確定給付型 給付額または給付額の算定方法があらかじめ定められており、年金資産の運用によって拠出額が変動する制度。
退職一時金制度、厚生年金基金制度、適格退職年金制度等があります。
確定拠出型 掛け金または掛け金の算定方法があらかじめ定められており、掛け金がそのまま企業の費用となり、年金資産の運用によって給付額が変動する制度。
中小企業退職共済制度、特定退職金共済制度等があります。

2.確定給付型の退職給付制度

(1)退職一時金制度

退職一時金制度とは、退職給付債務に対して外部積立を行わず、内部積立のみをもって一時金を支払う制度のことです。退職一時金は通常、就業規則等の退職金規定に基づき支払われます。
内部積立のみということは、退職給付債務の原資となる資産はすでに貸借対照表の資産の部に計上されていることになりますので、後述する年金資産のような処理は必要ありません。

(2)厚生年金基金制度

厚生年金基金制度とは、企業が厚生年金基金を設立し、国の厚生年金保険の一部を代行するとともに、企業が独自の給付を上乗せする制度のことです。
厚生年金基金制度においては、老齢厚生年金の報酬比例部分について国に代行して基金から支給することに加え、企業の実態に合わせて企業独自の給付を上乗せして支給するため、より手厚い給付金が確保されます。なお、給付形態には加算型、代行型および共済型があります。
厚生年金基金制度によると、企業が負担する掛け金が全額損金算入でき、従業員が負担する掛け金は所得税の社会保険料控除の対象になるという税務上のメリットがあります。

(3)適格退職年金制度

適格退職年金制度とは、企業が従業員に支払う退職給付を事前に信託銀行、生命保険会社等の外部へ積み立て、退職給付の支給の際には積立先が支払う制度のことです。適格退職年金制度採用の要件は、法人税法施行令附則第16条に定められています。なお、適格退職年金制度は、平成14年4月1日以降10年間の経過措置後に廃止されることが決まっているため、新規発足することはできません。
適格退職年金制度によると、企業が負担する掛け金は全額損金算入できるという税務上のメリットがあります。

(4)確定給付企業年金制度

確定給付企業年金とは、確定給付企業年金法(平成14年4月施行)に基づいて定められた確定給付型の年金です。確定給付企業年金法は、確定給付型の年金について受給権保護等を図るために制定された法律で、積立基準、受託者責任、情報開示等統一的な基準を定めるとともに、厚生年金基金については、厚生年金の代行を行わない他の企業年金制度への移行を認めることなどが定められています。なお、確定給付企業年金の誕生により、適格退職年金は廃止されることになりました(経過措置により、平成24年3月31日までに確定給付企業年金に移行することができます)。
確定給付企業年金制度には、規約型企業年金と基金型企業年金の二つの種類があります。

|1|2次のページ