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企業結合(平成25年改正会計基準)

第1回:従来との変更点(1)

2015.09.09
新日本有限責任監査法人 公認会計士 伊藤 毅

1. はじめに

企業会計基準委員会は、平成25年9月13日に企業会計基準及び関連する他の改正会計基準等を公表しました。

企業結合に関する会計基準等については、企業会計基準委員会において、ステップ1 とステップ2 とに区分して見直しが行われていました。
具体的には、平成20 年12 月にステップ1 の見直しについて完了した後、ステップ2 において、既存の差異に関連するプロジェクト項目として、主に国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)の企業結合に関する共同プロジェクト(フェーズ2)で取り上げられた論点を対象として検討がなされました。今回の改正は、その結果に基づくものです。

2. 改正される会計基準等

改正された会計基準等及びそれに対応して改正された実務指針は、以下のとおりです。

企業結合 会計基準 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下「企業結合会計基準」という。)
企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(以下「事業分離会計基準」という。)
適用指針 企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下「結合分離適用指針」という。)
連結 会計基準 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)
実務指針等 会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨建実務指針」という。)
会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(「連結税効果実務指針」という。)
会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(以下「資本連結実務指針」という。)
会計制度委員会報告第7号(追補)「株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針」
会計制度委員会報告第9号「持分法会計に関する実務指針」(以下「持分法実務指針」という。)
「金融商品会計に関するQ&A」
「土地再評価差額金の会計処理に関するQ&A」
純資産の部 会計基準 企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産の部の表示会計基準」という。)
適用指針 企業会計基準適用指針第8号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」
キャッシュ・フロー計算書 実務指針 会計制度委員会報告第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」(以下「連結C/F実務指針」という。)
株主資本等変動計算書 会計基準 企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」(以下「株主資本会計基準」という。)
企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」(以下「包括利益の表示会計基準」という。)
適用指針 企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」(以下「株主資本適用指針」という。)
1株当たり情報 会計基準 企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」(以下「EPS会計基準」という。)
適用指針 企業会計基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(以下「EPS適用指針」という。)

なお、従来から変更又は新設された主な会計基準の定めの概要は以下の通りです。

(1) 会計処理方法に関する改正

① 支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動

改正前 改正後 関連する会計基準等の定め
親会社の持分変動による差額は、追加取得の場合はのれん又は負ののれん、一部売却の場合は持分変動差額等として損益に計上する。 親会社の持分変動による差額は、資本剰余金に計上する。※1、3 連結会計基準第28項から第30-2項
事業分離会計基準第17項から第19項
子会社株式の一部を売却した場合、親会社の持分変動による差額のうち、子会社が計上している評価・換算差額等に係る部分については、子会社株式の売却により連結上の実現損益となるため、個別財務諸表上の子会社株式売却損益(当該部分がすでに含まれている。)の修正に含めない。 子会社株式の一部を売却した場合、売却した株式に対応する持分には、子会社に係るその他の包括利益累計額が含まれるが、売却持分には、その他の包括利益累計額は含まれない。なお、この処理に伴って減少したその他の包括利益累計額は当期純利益を構成するものではないため、組替調整額の対象とはならず、連結株主資本等変動計算書における当連結会計年度の増減として表示する。 資本連結実務指針第42項外貨建実務指針第42-3項、設例13
連結財務諸表上の売却簿価は売却前の金額に基づき算定した以下の項目の加減算額となり、これと個別貸借対照表上の投資減少額との差額のうち、すでに連結上損益処理されている部分を子会社株式売却損益の修正として処理する。
①資本×売却持分比率=増額する少数株主持分
②のれん未償却額×売却持分比率÷売却前親会社持分比率=減少するのれん
支配獲得時に計上したのれんの未償却額については、子会社株式を一部売却した場合等において減額しない。 資本連結実務指針第44項
資本連結実務指針第66-3項
(新設) 子会社への投資の追加取得や一部売却が行われた後に支配を喪失して関連会社になった場合、関連会社として残存する持分比率に相当するのれんの未償却額を算定する。 資本連結実務指針第45-2項、第66-6項
(新設) 子会社への投資の追加取得及び一部売却等によって生じた資本剰余金は、その後当該子会社株式を売却などした結果、支配を喪失したとしても、純損益や利益剰余金に振り替えることなく、そのまま資本剰余金に計上する。 資本連結実務指針第49-2項
外貨建実務指針第42-3項なお書き
(新設) 子会社への投資を一部売却した場合は、親会社の持分変動による差額(売却により生じた親会社の持分の減少額と売却価額との差額)に係る法人税等相当額について、連結仕訳上、法人税、住民税及び事業税を相手勘定として資本剰余金から控除する 連結税効果実務指針第39項
(新設) 連結範囲の変動を伴わない子会社株式の取得又は売却に係るキャッシュ・フローについては、当該変動に関連するキャッシュ・フローを、非支配株主との取引として「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する。 連結C/F実務指針第9-2項

② 取得関連費用

改正前 改正後 関連する会計基準等の定め
取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等は取得原価に含め、それ以外の支出額は発生時の事業年度の費用として処理する。 取得関連費用は、発生した事業年度の費用として処理する。※2、3 企業結合会計基準第26項、第94項
(新設) 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準では、連結範囲の変動を伴う子会社株式の取得又は売却に係るキャッシュ・フローは、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に独立の項目として記載することとされている。なお、連結範囲の変動を伴う子会社株式の取得に係る取得関連費用、及び連結範囲の変動を伴わない子会社株式の追加取得に関連して生じた費用に係るキャッシュ・フローは、いずれも「営業活動によるキャッシュ・フロー」に表示する。 連結C/F実務指針第8-2項なお書き、第9-2項なお書き

③ 暫定的な会計処理の確定

改正前 改正後 関連する会計基準等の定め
暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度に行われた場合には、企業結合年度の財務諸表はすでに確定しているため、企業結合年度に当該修正が行われたとしたときの損益影響額を、企業結合年度の翌年度において、原則として、特別損益(前期損益修正)に計上する。 暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度に行われた場合には、企業結合年度に当該確定が行われたかのように会計処理を行う。 企業結合会計基準 第28項、(注6)なお書き
結合分離適用指針第70項第73項
(新設) 暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度に行われ、当該年度の株主資本等変動計算書のみの表示が行われる場合には、期首残高に対する影響額を区分表示するとともに、当該影響額の反映後の期首残高を記載する。 株主資本会計基準第5-3項
(新設) 企業結合年度の翌年度の財務諸表と併せて表示する企業結合年度の財務諸表の1株当たり情報は、当該確定が反映された後の金額により算定する。 EPS会計基準第30-6項
EPS適用指針第36-3項

(2) 表示方法に関する改正

改正前 改正後 関連する会計基準等の定め
税金等調整前当期純利益に法人税額等を加減して、少数株主損益調整前当期純利益を表示する。
少数株主損益調整前当期純利益に少数株主損益を加減して、当期純利益を表示する。
税金等調整前当期純利益に法人税額等を加減して、当期純利益を表示する。
2 計算書方式の場合は、当期純利益に非支配株主に帰属する当期純利益を加減して、親会社株主に帰属する当期純利益を表示する。1 計算書方式の場合は、当期純利益の直後に親会社株主に帰属する当期純利益及び非支配株主に帰属する当期純利益を付記する。
連結会計基準第39項(3)
表示科目
  • 少数株主持分
  • 当期純利益
  • 当期純損失
表示科目
  • 非支配株主持分
  • 親会社株主に帰属する当期純利益
  • 親会社株主に帰属する当期純損失
連結会計基準第26項、第39項(3)、純資産の部の表示会計基準第7項、株主資本会計基準第7項、包括利益の表示会計基準第6項、EPS会計基準第12項 等
  • ※1持分法適用会社株式の追加取得や一部売却等の場合に、追加取得持分と追加取得額との差額又は売却(減少)持分と売却価額(払込額)との差額は、のれんもしくは負ののれん又は売却損益の調整とされる(持分法実務指針第2-2(4)項)。
  • ※2持分法適用会社の株式を取得(追加取得を含む。)した場合、連結財務諸表上、個別財務諸表上で株式の取得原価に含まれた付随費用は投資原価に含まれる(持分法実務指針第2-2(3)項、第36-4項)。
  • ※3持分法適用非連結子会社は、連結の範囲から除いても連結財務諸表へ与える影響が乏しいために持分法を適用しているものであり、この点を踏まえると、※1及び※2の会計処理は、連結子会社の会計処理に準じた取扱い又は関連会社と同様の取扱いのいずれもが認められる(持分法実務指針第3-2項)。

3. 改正点の内容

(1) 支配が継続している場合の連結子会社に対する親会社の持分変動

① 連結子会社に対する親会社持分が変動した場合

改正前では、連結子会社の株式を追加取得した場合には、変動する持分額と取得価額との差額をのれん又は負ののれんに計上し、連結子会社株式を一部売却した場合には、減少する持分額と個別財務諸表上の売却簿価との差額を売却損益の修正として処理し、また、売却に伴うのれんの償却額についても同様に処理するという会計処理が採用されていました。また、連結子会社の時価発行増資等の場合には、当該時価発行増資により、親会社持分比率が増加する場合にはのれんを計上し、親会社持分比率が減少する場合には、持分変動差額を損益に計上する会計処理が採用されていました。

改正後では、わが国において重視されている親会社株主の視点からは、国際的な会計基準と同様の会計処理を行うことを導き出すことは必ずしも容易ではないものの、国際的な会計基準との比較可能性の確保という観点により、親会社の持分変動による差額は、資本剰余金に計上することとされました(連結会計基準第28 項から第30項)。また、親会社の持分変動による差額を資本剰余金の増減として会計処理をした結果、資本剰余金が負の値となる場合には、連結会計年度末において、資本剰余金を零とし、当該負の値を利益剰余金から減額することとなりました(連結会計基準30-2)。

非支配株主との取引の例 (子会社株式を一部売却した場合)

<前提条件>
  • 前期末に子会社株式を80%取得(取得原価1,000、子会社純資産1,000、のれん200発生(5年償却))した。
  • 当期末に20%を売却(売却価額300、子会社純資産1,000)した。なお、税効果については考慮しないものとする。
当期末の個別仕訳
(借)
現金預金
300
(貸)
子会社株式
子会社株式売却益
250
50

当期末の連結仕訳(改正前)
(借)
子会社株式 ※2
250
(貸)
少数株主持分
のれん ※1
子会社株式売却益
200
40
10
  • ※1当期ののれん償却額 200×1/5=40
  • ※21,000÷80%×20%=250

当期末の連結仕訳(改正後)
(借)
子会社株式 ※2
子会社売却益
250
50
(貸)
非支配株主持分
資本剰余金
200
100
図1 当期末の連結仕訳(改正後)
  • ※3子会社純資産1,000×20%+のれん未償却残高160÷80%×20%=240
  • ※4子会社純資産1,000÷80%×20%=200

② 企業結合や事業分離が行われた場合

企業結合や事業分離が行われた場合に生じる非支配株主との取引については、連結会計基準における子会社株式の追加取得及び一部売却等の取扱いに準じて処理します(企業結合会計基準第46項、事業分離会計基準第17 項から第19 項)。そのため、吸収分割することにより、ある事業の持分比率が減少する場合は、非支配株主との取引について、以下のような取扱いになります。

非支配株主との取引の例(分離する事業に対する親会社持分が減少する場合)

<前提条件>
  • X2年3月31日に、分離元企業(吸収分割会社)A社は、吸収分割によりa事業をB社の100%子会社である分離先企業(吸収分割承継会社)Y社に移転した。
  • A社は、Y社がa事業の対価として発行する株式を受け取った結果、Y社は、A社の80%子会社となった。なお、事業分離前には、分離元企業は、分離先企業の株式を保有していない。
事業分離前
事業分離前
事業分離後
事業分離後

A社が保有していたa事業は、吸収分割によりY社が取得しますが、Y社はA社の80%子会社になるため、A社はY社を通じてa事業の持分を継続して保有し続けます。しかしながら、A社のa事業の持分比率は、吸収分割の前後で100%から80%へ減少することになります。「分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額(a事業の時価×(1-80%)」と「移転した事業に係る親会社の持分の減少額(a事業に係る株主資本相当額×(1-80%)」との間に生じた差額 については、改正前は持分変動差額として連結損益計算書に計上していましたが、改正後は資本剰余金として連結株主資本等変動計算書に計上することになります。

(下の図をクリックすると拡大します)

なお、改正後では非支配株主との取引に係る親会社の持分変動に関する事項として、非支配株主との取引によって増加又は減少した資本剰余金について、主な要因及び金額の注記が要求されることとなりました。なお、当該注記が要請されるのは、連結財務諸表のみであり、個別財務諸表には要請されません(企業結合会計基準第52項(4))。

改正内容をまとめると、以下の表のようになります。

  改正前 改正後
会計処理
(子会社に対する支配が継続している場合の親会社持分変動による差額の処理)
親会社持分増加の場合の差額は「のれん」又は「負ののれん」に計上
親会社持分減少の場合の差額は「持分変動損益」に計上。
親会社持分変動に係る対価と親会社持分との差額は「資本剰余金」に計上。
注記
(共通支配下の取引等に係る注記事項)
発生したのれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間(負ののれんの場合には、負ののれんの金額及び発生原因)。 増加又は減少した資本剰余金
の主な変動要因及び金額(個別財務諸表においては当該注記を要しない)。

(2) 取得関連費用の取扱い

改正前では、取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等は取得原価に含め、それ以外の支出額は発生時の事業年度の費用として処理することとされていました。これは、取得はあくまで等価交換取引であるとの考え方を重視し、取得企業が等価交換の判断要素として考慮した支出額に限って取得原価に含めることとしたためです。

改正後では、国際的な会計基準に基づく財務諸表との比較可能性を改善するという観点や、取得関連費用のどこまでを取得原価の範囲とするかが不明瞭であるという実務上の問題点を解消する観点により、取得関連費用は事業年度の費用として処理することとされました。(企業結合会計基準第26項、第94項)

また、企業結合の実態を把握するにあたり有用な情報であるため、国際的な会計基準も参考にして、取得原価の算定等に関する事項として主要な取得関連費用の内容及び金額を注記することとされました。(企業結合会計基準第49項(3)④、第126-2項)

なお、個別財務諸表における子会社株式の取得原価は、従来と同様に、金融商品会計基準及び金融商品会計に関する実務指針に従って、取得の対価に付随費用を加算して算定することに留意する必要があります(企業結合会計基準第94項)。

発生した事業年度の費用として処理される取得関連費用の範囲
発生した事業年度の費用として処理される取得関連費用の範囲

取得関連費用の取扱いの例

<前提条件>
  • 取得対価 800
  • 取得関連費用 200
改正前 改正後
子会社株式を新規に取得する場合 連結 1,000
(=800+200)
800 ※
個別 1,000
(=800+200)
1,000
(=800+200)
合併、事業譲受、会社分割等の事業の受入により個別財務諸表上で企業結合をする場合 連結 1,000
(=800+200)
800 ※
個別 1,000
(=800+200)
800 ※
※改正前は取得関連費用200が取得原価に含まれることにより、連結上において、のれんに取得関連費用相当200が含まれていましたが、改正後はこれが発生時に費用処理されることになります。

改正内容をまとめると、以下の表のようになります。

  改正前 改正後
会計処理 取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等は取得原価に含める。
それ以外の支出額は発生時の事業年度の費用とする。
取得関連費用は発生した事業年度の費用として処理する。
注記 主要な取得関連費用の内容及び金額を注記。

つづきは、「第2回 従来との変更点(2)」をご参照ください。


企業結合(平成25年改正会計基準)

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