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企業結合(平成15年会計基準)

第2回:組織再編の手法と会計処理の具体例

2010.10.08
新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子

4.各種組織再編手法別の数値例による取得の会計処理の解説

以下では、吸収合併、株式交換、株式移転および吸収分割といった各組織再編手法において、企業結合が取得とされた場合の会計処理について、数値例を用いて解説いたします。数値例においては、組織再編当事会社の組織再編直前の貸借対照表につき同じものを使用し、組織再編手法が異なっても、結果が同じとなるように考慮されています。

(1)吸収合併

a. 前提条件

  • A社がB社を吸収合併。A社とB社の企業結合は「取得」に該当。A社が取得企業。
  • 発行済株式数:A社:1,000百万株、B社:50百万株 すべて普通株式。
  • B社の土地時価評価額:7,000(土地以外の資産・負債は時価=簿価)
  • 増加する株主資本は、すべてその他資本剰余金。
  • A社の株式時価は、@140。合併比率は、1:2
  • 対価は、すべて普通株式であり、新株の発行による。

合併直前の各社の貸借対照表
(単位:百万円)
  A社のBS B社のBS
     
現金 60,000 12,000
土地 20,000 5,000
その他資産 2,000 200
資産の部計 82,000 17,200
     
負債 (19,000) (8,000)
資本金 (50,000) (200)
利益剰余金 (13,000) (9,000)
負債・純資産の部 (82,000) (17,200)

b. 取得原価の計算

  • 増加する株式数=50×2=100百万株
  • 取得原価=100×140=14,000百万円

c. 合併の仕訳

(借) 現金 12,000 (貸) 負債 8,000
  土地 7,000   その他資本剰余金 14,000
  その他資産 200      
  のれん 2,800      

仕訳を図表化すると図表3の「受入資産・負債の時価評価後のバランス・シート」のような表現になります。

図表3:受入資産・負債の時価評価後のバランス・シート
   図表3:受入資産・負債の時価評価後のバランス・シート

※括弧の数字は 3.取得とされる企業結合の会計処理 に対応しています。

d. 合併直後の貸借対照表

(単位:百万円)
  A社のBS 合併仕訳 合併直後BS
       
現金 60,000 12,000 72,000
土地 20,000 7,000 27,000
その他資産 2,000 200 2,200
のれん   2,800 2,800
資産の部計 82,000 22,000 104,000
       
負債 (19,000) (8,000) (27,000)
資本金 (50,000)   (50,000)
その他資本剰余金   (14,000) (14,000)
利益剰余金 (13,000)   (13,000)
負債・純資産の部 (82,000) (22,000) (104,000)

(2)株式交換

a. 前提条件

  • A社がB社の株式を株式交換で100%子会社化。企業結合は「取得」に該当
  • 取得企業は、A社と判定。
  • 発行済株式数:A社:1,000百万株、B社:50百万株  すべて普通株式
  • B社の土地時価評価額:7,000(これ以外の資産・負債は時価=簿価)
  • 増加する株主資本は、すべてその他資本剰余金とする。
  • A社の株式時価は、@140。株式交換比率は、1:2
  • 対価は、すべて普通株式であり、新株の発行による。
  • A社は、株式交換の直前まで、B社株式を有していない。
  • 株式交換直前の各社の貸借対照表は(1)吸収合併のa.前提条件と同じ。

b. 取得原価の計算

株式交換完全親会社(A社)が取得する株式交換完全子会社(B社)の株式の取得原価は、取得の対価に、取得に直接要した支出額(取得の対価性が認められるものに限る)を加算して算定します(結合分離指針110)。本設例では、取得に直接要した支出額(取得の対価性が認められるものに限る)がないため、取得原価の金額は以下の計算式によるものとなります。

増加する株式数=50×2=100百万株
取得原価=100×140=14,000百万円

ただし、株式交換完全親会社が作成する連結財務諸表において、みなし取得日に株式交換が行われたものとして会計処理する場合には、個別財務諸表上も株式時価の算定基準日は、企業結合日ではなくみなし取得日となります(結合分離指針110)。

c. 株式交換の仕訳

(借) B社株式 14,000 (貸) その他資本剰余金 14,000

d. 株式交換直後の貸借対照表

(単位:百万円)
  A社のBS 株式交換仕訳 交換直後BS
       
現金 60,000   60,000
土地 20,000   20,000
その他資産 2,000   2,000
B社株式   14,000 14,000
資産の部計 82,000 14,000 96,000
       
負債 (19,000)   (19,000)
資本金 (50,000)   (50,000)
その他資本剰余金   (14,000) (14,000)
利益剰余金 (13,000)   (13,000)
負債・資本の部 (82,000) (14,000) (96,000)

また、B社は、A社の100%子会社となったため、A社が連結財務諸表を作成することとなります。

e. 株式交換直後の連結貸借対照表

株式交換直後の連結貸借対照表を精算表形式で表すと以下のようになります。

(単位:百万円)
  A社のBS B社のBS 合算 時価評価 投資と
資本相殺消去
連結
             
現金 60,000 12,000 72,000     72,000
土地 20,000 5,000 25,000 2,000   27,000
その他資産 2,000 200 2,200     2,200
B社株式 14,000   14,000   (14,000) 0
のれん         2,800 2,800
資産の部計 96,000 17,200 113,200 2,000 (11,200) 104,000
             
負債 (19,000) (8,000) (27,000)     (27,000)
資本金 (50,000) (200) (50,200)   200 (50,000)
その他資本剰余金 (14,000)   (14,000)     (14,000)
利益剰余金 (13,000) (9,000) (22,000)   9,000 (13,000)
評価差額       (2,000) 2,000 0
負債・純資産の部 (96,000) (17,200) (113,200) (2,000) 11,200 (104,000)

上記の連結貸借対照表が「(1)吸収合併d.合併直後の貸借対照表」 と同じであることを確認してください。