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企業結合(平成15年会計基準)

第1回: 企業結合会計の範囲と取得の会計処理

2010.10.01
新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子
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1.定義・範囲

企業結合の会計基準は、一般に合併・会社分割・株式交換・株式移転といった、組織再編行為の会計基準であると理解されていると思いますが、企業会計基準第21 号「企業結合に関する会計基準」(以下、企業結合会計基準)において、「企業結合」とは、ある企業またはある企業を構成する事業と他の企業または他の企業を構成する事業とが一つの報告単位に統合されること(企業結合会計基準5)と定義されており、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下、連結会計基準)にいう他の会社の支配の獲得も含む(企業結合会計基準66)ものとされます。また、共同支配企業と呼ばれる企業体を形成する取引および共通支配下の取引等も、企業結合会計基準の適用対象となります(企業結合会計基準66)。さらに、企業結合会計基準は、組織再編行為を行ったときの個別財務諸表上の会計処理のみならず、連結グループ内外の会社間で株式交換・株式移転や会社分割が行われた場合の連結上の会計処理をその適用範囲に含んでいます。
一方、会社分割では、事業を受け入れる分割承継会社にとっては企業結合となりますが、事業を分離する分割会社の方では、事業が報告単位から離れていくこととなります。ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む)に移転することを「事業分離」といいますが、この事業分離は企業結合とは異なる経済事象と考えられます。このため、事業分離の会計処理に関しては、企業結合会計基準とは別に、企業会計基準第7 号「事業分離等に関する会計基準」(以下、事業分離等会計基準)が公表されています。事業分離には、会社分割のほか、連結子会社の持分の売却などにより、子会社が連結から外れる場合も、事業分離等会計基準の適用対象となります。また事業分離等会計基準には、企業結合・事業分離が行われた場合の株主の会計処理についてもその範囲に含まれています。
従って、連結会計を含む組織再編行為の会計の全体像は、企業結合会計基準、事業分離等会計基準および連結会計基準という三つの会計基準に係るものとなります。図表1で、各会計基準に置かれている項目と個別財務諸表上の会計処理、連結財務諸表上の会計処理を整理しています。

【図表1】

図表1
2.企業結合の会計処理

企業結合会計基準における企業結合の会計処理は、(1)取得、(2)共通支配下の取引等、および(3)共同支配企業の形成の三つがあります。

(1) 取得

取得とされる企業結合とは、後述の共同支配企業の形成(企業結合会計基準11)および共通支配下の取引等(企業結合会計基準16)以外の企業結合と定義されます。

(2) 共通支配下の取引等

企業集団内における組織再編の会計処理には、共通支配下の取引と少数株主との取引(以下、あわせて、共通支配下の取引等)があります。
「共通支配下の取引」とは、結合当事企業(または事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいうこととされます(企業結合会計基準16)。親会社と子会社の合併および子会社同士の合併は、共通支配下の取引に含まれます。
これに対して、少数株主から、子会社株式を追加取得する取引を「少数株主との取引」といいます。少数株主との取引は、企業集団を構成する子会社の株主と、当該子会社を支配している親会社との間の取引であり、親会社の立場からは、企業集団内の取引ではなく、外部取引と考えられます(企業結合会計基準120)。また、少数株主との取引の範囲には、企業結合とはならない子会社株式の追加取得も含まれていますが、共通支配下の取引と少数株主との取引は、いずれも企業集団内における組織再編の会計処理であるとして、企業結合会計基準で取り扱われています。

(3) 共同支配企業の形成

「共同支配企業」とは、複数の独立した企業により共同で支配される企業をいい、「共同支配企業の形成」とは、複数の独立した企業が契約等に基づき、当該共同支配企業を形成する企業結合をいうこととされます(企業結合会計基準11)。
ある企業結合を共同支配企業の形成と判定するためには、共同支配投資企業となる企業が、複数の独立した企業から構成されていることおよび共同支配となる契約等を締結していることに加え、次の要件を満たしていなければならないとされます(企業結合会計基準37)。

a.企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること

企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であると認められるためには、同時に次の要件のすべてが満たされなければならないとされます(企業結合会計基準注7)。

  1. ア.企業結合が単一の取引で行われるか、または、原則として、1 事業年度内に取引が完了する。
  2. イ.交付株式の議決権の行使が制限されない。
  3. ウ.企業結合日において対価が確定している。
  4. エ.交付株式の償還または再取得の取り決めがない。
  5. オ.株式の交換を事実上無効にするような結合当事企業の株主の利益となる財務契約がない。
  6. カ.企業結合の合意成立日前1年以内に、当該企業結合を目的として自己株式を受け入れていない。

b.支配関係を示す一定の事実が存在しないこと

次のいずれにも該当しない場合には、支配関係を示す一定の事実が存在しないものとされます(企業結合会計基準注8)。

  1. ア.いずれかの結合当事企業の役員もしくは従業員である者またはこれらであった者が、結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関(重要な経営事項の意思決定機関)を事実上支配している。
  2. イ.重要な財務および営業の方針決定を支配する契約等により、結合当事企業のうちいずれかの企業が他の企業より有利な立場にある。
  3. ウ.企業結合日後2年以内にいずれかの結合当事企業が投資した大部分の事業を処分する予定がある。
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