企業会計ナビ
関連当事者の開示に関する会計基準の概要

第3回:対象取引の範囲

2009.01.15
新日本有限責任監査法人 公認会計士 七海健太郎
新日本有限責任監査法人 公認会計士 中村崇
|1|2次のページ

第2回で記載した関連当事者の開示フローに沿って、第3回では対象取引の把握について解説します。なお、文中の意見にかかわる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

1.開示対象取引

関連当事者との取引とは、会社と関連当事者との取引をいい、対価の有無にかかわらず、資源もしくは債務の移転、または役務の提供をいいます。また、関連当事者が第三者のために会社との間で行う取引や、会社と第三者との間の取引で関連当事者が当該取引に関して会社に重要な影響を及ぼしているものを含みます(関連当事者の開示に関する会計基準(以下、会計基準)第5項(1))。

ここで会社と関連当事者との取引における「会社」とは、連結財務諸表上は連結会社(連結財務諸表作成会社および連結子会社)をいい、個別財務諸表上は財務諸表作成会社をいうため(会計基準第5項(2))、新たに連結子会社と関連当事者との取引も開示対象となりました。連結財務諸表を作成するに当たって相殺消去した取引は従来通り、開示対象の取引には含まれません(会計基準第6項)。連結会社が直接かかわらない関連当事者同士の取引については、正確かつ網羅的な情報の入手が困難であることや、影響が軽微な場合が多いと考えられることから開示対象外です(会計基準第34項)(第1回図2参照)。

従来と比較すると、第2回で解説した「関連当事者の範囲」の拡大と併せ、「開示対象取引の範囲」も拡大したことになります。

なお、下記の取引については従来と同様、開示対象取引となります。

(1) 無償取引及および低廉な価格での取引

無償取引(無利子貸付、寄付等)や低廉な価格での取引(低利貸付等、取引金額が時価に比して著しく低い場合)で、実際の取引金額ではなく独立第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積もって重要性の判断を行った結果、重要性が高い場合(会計基準第7項、第29項)。

(2) 形式的・名目的には第三者との取引である取引

形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であることが明確な場合(会計基準第8項、第30項)。

2.開示対象外取引
  1. (1)一般競争入札による取引ならびに預金利息および配当の受け取りその他取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引(会計基準第9項(1))
  2. (2)役員に対する報酬、賞与および退職慰労金の支払い
    これらについては開示対象取引には含まれません(会計基準第9項(2))。
3.資本取引

資本取引は従来同様、開示対象取引に含まれ、会社と関連当事者との間での増資引き受けや自己株式取得などは開示対象取引となりますが、公募増資は、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引に該当し、開示対象外取引となります。期末残高の開示は、資本取引の場合、債権債務関係とは異なるため求められていません(会計基準第28項)。


|1|2次のページ