四半期 第9回:四半期レビューの概要(1)

2011年4月22日
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 山岸 聡

四半期レビュー基準および実務指針の設定状況

四半期報告書に記載される四半期財務諸表については、公認会計士または監査法人(以下、監査人)の監査証明を受けることとされています。四半期財務諸表についての監査証明については、「レビュー方式」によることとされ、企業会計審議会監査部会より「四半期レビュー基準」が公表されています。

さらに、四半期レビューを実務に適用するに当たって必要となる実務の指針である「四半期レビューに関する実務指針(以下、実務指針)」が、日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会から公表されています。

監査と四半期レビューの関係

四半期報告制度における四半期財務諸表のレビューは、年度の財務諸表の監査を行う監査人が実施することを前提として制度設計されています。監査人は、年度監査で得られた企業についての理解を四半期レビューに生かすことにより、効率的で効果的なレビューを実施することができると考えられ、「監査人は年度の財務諸表の監査と適切に組み合わせて四半期レビューを実施することにより、監査の実効性がより向上することが期待され(四半期レビュー基準 前文二1)」ています。
国際会計士連盟(IFAC)の国際監査・保証基準委員会(IAASB)が策定している国際レビュー基準(International Standards on Review Engagement 以下、ISRE)では、年度の監査人がレビューを行う際の基準であるISRE2410と、年度の監査人以外がレビューを実施する際の基準であるISRE2400が設定されており、わが国の四半期レビュー基準はISRE2410をベースとして策定されています。

監査と四半期レビューの違い

1. 目的の違い

財務諸表の監査の目的は、財務諸表が、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、(中略)適正に表示しているかどうか(監査基準 第一 監査の目的)」について意見を表明することにあるとされており、適正性に関して積極的形式による意見が表明されます。
一方、四半期レビューの目的は、四半期財務諸表が、「一般に公正妥当と認められる四半期財務諸表の作成基準に準拠して、(中略)適正に表示していないと信じさせる事項が(中略)認められなかったかどうか(四半期レビュー基準 第一 四半期レビューの目的)」について結論を表明することにあるとされており、適正性に関して消極的形式による結論が表明されます。

【図表1】

  年度監査 中間監査 四半期レビュー
目的 適正性 有用性 適正性
結論の形式 積極的形式 積極的形式 消極的形式
結論の表現 適正に表示しているものと認める。 有用であると認める。 適正に表示していないと信じさせる事項は認められなかった。
保証の程度 合理的保証 合理的保証 限定的保証

2. 手続きの違い

監査と四半期レビューの目的の違いを反映して、実施される手続きも大きく異なっています。監査の場合には、財務諸表を構成する各項目について、それらが実在するか、評価が妥当になされているか、適切な会計期間に計上されているかなどの目標を設定し、これらの目標を立証するために、実査、立会、確認、質問、閲覧、査閲、証憑突合、帳簿突合、再実施、分析的手続等の監査手続を実施し、入手した監査証拠を積み上げることにより、財務諸表全体の適正性に関する結論を得ています。
一方、四半期レビューにおける手続きの中心は、質問および分析的手続であり、「通常、内部統制の運用評価手続や、実査、立会、確認、証憑突合、質問に対する回答についての証拠の入手及びその他の実証手続に基づく証拠の入手は要求されていない(実務指針Ⅱ)」。また、監査では、見積もりの監査として、会計上の見積もりにおける仮定の適切性や計算の正確性を検討するとともに、決算日後の確定額等と比較するなどの手続きを実施しますが、四半期レビューにおいてはこうした手続きは求められておらず、監査に比べると限定的な手続きとなっています(【図表2】参照)。

【図表2】

手続 監査 四半期レビュー
内部統制を含む企業及び企業環境の理解
内部統制の運用評価手続 ×
質問・分析的手続
議事録等の書類の閲覧
実査・立会・確認 ×
証憑突合 ×

3. 中間監査と四半期レビューの違い

中間監査は、【図表1】のとおり、有用性に関する積極的形式による意見の表明を目的としています。中間監査の目的が有用性であるのは、中間財務諸表が中間会計期間に係る企業の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に関し有用な情報の提供をするものであり(中間財務諸表作成基準第一 一般原則)、中間監査の保証水準が年度監査とは異なるためと考えられます。
中間監査においては、年度監査の手続きの一部を省略することが認められていますが(中間監査基準 実施基準5)、中間監査は合理的保証を得ることを目的としており、限定的保証を得るための四半期レビューとは実施される手続きにおいても異なっています。