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四半期

第3回:四半期財務諸表の会計処理(2)(原価計算、固定資産等)

2011.04.22
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡
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原価計算

  • 原価差異の繰延処理(基準12)
  • 原価差異の配賦計算の簡便的な方法(適用指針9、89)

1.原価差異の繰延処理

次の要件を満たす場合には、原価差異を流動資産または流動負債として繰り延べることができるとされています。

(要件)

  • 原価差異が操業度等の季節的な変動に起因したものであること
    「操業度等の季節的な変動」には、「販売量の季節的変動が大きい業種であること」や、「生産設備の定期修繕による計画的な操業度の低下」などが例と考えられます。これに対して、例えば「主要な売上先が在庫調整に入ってしまった」ことによる操業度の低下は、季節的な変動とは言い難く、かつ原価計算期間末までに解消できるかどうかを見込むことも実際には困難が伴うと考えられます。
    発生した原価差異のうち繰延処理の対象となる、操業度等の季節的な変動に起因する原価差異を把握するためには、原価差異を要因別・内訳別に区分して把握することが必要と考えられます。

  • 原価計算期末までに当該原価差異がほぼ解消すると見込まれること
    繰延処理を適用するに当たっては、「原価差異が原価計算期間末までにほぼ解消されるかどうか」についての将来予測が伴います。この将来予測を合理的に行うための基礎として、予定操業度および標準原価(または予定原価)が当期の状況に照らして合理的に設定されていることを確認しておくことが必要です。

  • 継続適用を条件とすること
    四半期決算において、原価差異の会計処理は、年度決算と同様の処理(すなわち原価差額を繰り延べない方法)と、これまで説明した繰延処理との、いずれかを選択できることとなっており、いったん採用した方法は継続適用することとなっています。
    年度決算と同様の処理を選択した場合でも、四半期決算においては後述2.のとおり、発生した原価差異の配賦は年度決算よりも簡便的な方法によることができます。
    なお、繰延処理を選択しても、要件を満たさなくなった(例えば、原価計算期間末までの解消が見込まれなくなった)四半期末においては、年度決算と同様の処理を行うことになります。この場合、会計方針の変更には該当しないと考えられます。
    また、繰延処理を適用する範囲として、操業度の季節的な変動が大きい子会社や事業セグメントについてのみ適用する、という選択も考えられます。

四半期財務諸表の場合には季節変動も大きいと考えられ、操業度等が季節的に大きく変動する場合に原価差異を売上原価や棚卸資産に配賦すると、売上原価と売上高の対応関係が適切に表示されない可能性があることから、繰延処理が認められています。
【図表1】の例では、操業度の変動により第1四半期の標準原価が12,800、実際原価が12,400となっていることから、原価差異400をその他の流動負債として繰延処理することができます。

【図表1】

  第1四半期 第2四半期 第3四半期 第4四半期 年度計
標準原価 12,800 10,800 11,600 12,800 48,000
実際原価 12,400 11,400 11,800 12,400 48,000
原価差異
(-は不利差異)
+400 -600 -200 +400
原価差異(累計) +400 -200 -400  

(仕訳)
(借)売上原価(原価差異) 400   (貸)その他の流動負債 400

2.原価差異の配賦計算の簡便法

発生した原価差異は、製品単位や製品グループ等の区分により棚卸資産と売上原価へ配賦する必要がありますが、四半期財務諸表では、原価差異の配賦計算の簡便的な方法として、年度決算より大きな区分で配賦することが認められます。(ただし、報告セグメント等を超えない程度の範囲であることに注意が必要です。)

四半期において簡便的な方法によった場合でも、年度決算における原価差異の配賦は、四半期ごとに行った簡便的な配賦結果の積み上げとすることはできず、年度決算において求められる配賦方法に従い、期首からさかのぼって配賦計算を行うことになると考えられます。

なお、原価差異に重要性が乏しい場合には、年度と同様にすべてを売上原価に賦課します。

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