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「財務諸表の表示に関する論点の整理」について

第3回:IASBとFASBの予備的見解における主な論点

2010.03.26
新日本有限責任監査法人 ナレッジセンター
公認会計士 山岸聡
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【IASBとFASBの予備的見解での主張】

平成20年(2008年)10月に公表されましたが、IASBとFASBは、財務諸表の表示プロジェクトを三つのフェーズ(A、B、Cの各フェーズ)に分けて進めており、DPは財務諸表における情報の表示に関連する本質的な論点を扱ったフェーズBに関するものです。

DPは、財務諸表は財務情報を企業外の人々に伝達する主要な手段であるため、企業が財務諸表において情報をどのように表示するかは、極めて重要であるとしています。

IASBおよびFASBは、現行の定めが多くの代替的な表示を容認しており、財務諸表の情報が首尾一貫性に欠けることが、財務諸表と企業の財務業績の関係を理解するのが困難になっているという財務諸表利用者の懸念に対応するため、財務諸表の表示に関する会計基準の見直しを共同で進めています。

【具体的な提案】

  1. 財務諸表の表示に関する三つの目的(一体性の目的、分解の目的、流動性および財務的弾力性の目的)が掲げられ、財政状態計算書、包括利益計算書、キャッシュ・フロー計算書が事業セクションと財務セクション等に区分して表示され、各計算書の表示科目等が連携されること。
  2. 包括利益計算書は単一の計算書とされ、当該計算書において包括利益および当期純利益が表示されること。
  3. キャッシュ・フロー計算書は直接法で作成されなければならないこと。
  4. 新たな注記として、キャッシュ・フロー計算書と包括利益計算書との調整表が求められること。

【DPで提案されている各計算書の構成案】

財政状態計算書 包括利益計算書 キャッシュ・フロー計算書
事業
  • 営業資産及び負債
  • 投資資産及び負債
事業
  • 営業収益及び費用
  • 投資収益及び費用
事業
  • 営業キャッシュ・フロー
  • 投資キャッシュ・フロー
財務
  • 財務資産
  • 財務負債
財務
  • 財務資産からの収益
  • 財務負債からの費用
財務
  • 財務資産キャッシュ・フロー
  • 財務負債キャッシュ・フロー
法人所得税 継続事業(事業及び財務)に関する法人所得税 法人所得税
非継続事業 非継続事業(税引後) 非継続事業
  その他の包括利益
(税引後)
 
所有者持分   所有者持分

【論点A】財務諸表の表示の目的(一体性の目的・分解の目的・流動性および財務的弾力性の目的)

一体性の目的を徹底すると、財政状態計算書、包括利益計算書およびキャッシュ・フロー計算書において、科目の表示順序等の変更が必要となりますが、これによって財務諸表利用者の適切な投資意思決定に役立つかが論点です。

① 一体性の目的

企業は自らの活動の一体性のある財務の全体像を描写するように、財務諸表において情報を表示しなければなりません(DP 2.5項)。一体性のある財務の全体像とは、財務諸表間の項目の関係が明確で、企業の財務諸表が可能な限り、相互に補完し合っているということを意味します(DP 2.6項)。

② 分解の目的

企業は将来キャッシュ・フローの金額、時期および不確実性を評価する際に有用となる方法で、財務諸表において情報を分解しなければなりません(DP 2.7項)。

③ 流動性および財務的弾力性の目的:期日が到来した時点で財務

企業は、期日が到来した時点で財務コミットメントを履行し、事業機会に投資する企業の能力を財務諸表利用者が評価するのに役に立つ方法で、財務諸表において情報を表示しなければなりません(DP 2.12項)。

【論点B】事業セクションと財務セクションの区分

企業は、事業活動に関する情報と、資金を調達する財務活動に関する情報とを区分して表示しなければなりません。また、事業活動に関する情報を、営業活動に関する情報と投資活動に関する情報とに区分して表示し、事業活動の資金調達に関する情報を、資金調達の源泉により、区分して表示しなければなりません。

つまり、キャッシュ・フロー計算書でなされているのと同じように、財政状態計算書および包括利益計算においても事業セクションと財務セクションを区分表示するべきかが論点とされています。

【論点C】マネジメント・アプローチ

経営者の見方を重視する方法をマネジメント・アプローチとし、これを採用して経営者と財務諸表利用者とのコミュニケーションを促進させる便益と、これによって懸念される企業間比較の可能性の低下をどう調整するかが論点となっています。

企業は、資産または負債が企業内で用いられている方法を最も適切に反映するように、事業セクションおよび財務セクションにおいて資産および負債を分類しなければなりません。複数の報告セグメントを有する企業は、資産および負債が各報告セグメントで用いられている方法に基づいて、事業セクションおよび財務セクションにおいて資産および負債を分類しなければなりません(DP 2.27項)。

【論点D】各セクションにおける資産および負債の純額表示

DPが提案する財政状態計算書は、事業セクションや財務セクション、および、営業や投資などのカテゴリーにおいて、売上債権、棚卸資産、有形固定資産などのように項目ごとに記載されますが、各セクションやカテゴリーの小計では正味営業資産、正味事業資産、正味財務負債などのように純額で表示されます。

包括利益計算書およびキャッシュ・フロー計算書における事業活動および財務活動の区分が一体となり、意思決定により有用な情報が提供されるか、あるいは、構成要素別(資産・負債・資本)にまずは区分をし、その次に各構成要素を事業セクションと財務セクションに区分する方がよいのかが論点となっています。


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