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「財務諸表の表示に関する論点の整理」について

第2回:中長期的な対応

2010.03.25
新日本有限責任監査法人 ナレッジセンター
公認会計士 山岸聡

【論点4】損益の段階別表示

損益計算書における損益の段階別表示を見直すかについて、第2部で取り扱われている論点の動向を踏まえ、中長期的に検討することが適当とされています。

わが国では、損益計算書において、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益および当期純利益を示すこととされ、当期純利益から経常的に生じない損益項目である特別損益項目を除外した経常利益や営業利益は、将来キャッシュ・フローの予測に結びつく反復性のある利益という理解から、当期純利益と並んで有用な利益の指標であると考えられていると思われます。

しかし、国際的な会計基準では、経常利益に相当する表示は行わず、特別損益項目に関しては、当該項目への区分の具体的な判断基準が異なることにより、損益を区分する基準があいまいであるという指摘や企業間の比較を困難にするという指摘があります。

また、IASBとFASBとの財務諸表の表示プロジェクトでは、営業、投資、財務資産および財務負債のカテゴリー別や各カテゴリー内での機能別および性質別に分解するという、現行とは異なる包括利益計算書における区分表示を検討していることなどを踏まえ、特別損益項目や経常利益を含む損益の段階別表示について見直しの検討は必要なものの、IASBとFASBとの財務諸表の表示プロジェクトの動向により大きな影響を受けるため、第2部で取り扱われている論点と併せて中長期的に検討を行うことが適当であると考えられました(論点整理第97項)。

【論点5】損益項目の性質別開示

損益計算書または注記における損益項目の性質別開示に関する論点についても、第2部で取り扱われている論点の動向を踏まえ、中長期的に検討することが適当とされています。

損益項目の分類方法として、経済的特徴に基づく性質別分類と、どのような機能のために損益項目が発生したかどうかに基づく機能別分類とがあります。IFRSでは損益計算書上、性質別または機能別の分類により費用の内訳を開示するとされ、費用を機能別に分類している場合、費用の性質別の情報を追加開示することを求めています。

① 性質別分類

労働力および原材料などの経済的特徴で分類します。形態別分類または費目別分類ともいいます。

② 機能別分類

売上原価と販売費および一般管理費を区分することが該当します。裁量の余地があるのはこちらの機能別分類の方です。

わが国では、IAS第1号のような損益項目の性質別開示は定められていませんが、これを定めることが、財務諸表利用者の将来キャッシュ・フローの予測に資する情報の改善につながるのであれば、注記による性質別情報の追加開示を含め、損益項目の性質別開示を検討することが考えられます。

このような点を考慮して、損益の性質別の開示を定めるかどうか、および性質別の開示を定める場合にどのような開示を求めるのかの検討は、IASBとFASBとの財務諸表の表示プロジェクトの動向により大きな影響を受けるため、第2部で取り扱われている論点と併せて中長期的に検討を行うことが適当であると考えられます(論点整理第110項)。

【論点6】貸借対照表における流動固定区分と表示科目

貸借対照表における流動と固定の区分および最低限の表示科目についても、第2部で取り扱われている論点の動向を踏まえ、中長期的に検討することが適当とされています。

わが国においては、連結会計基準で連結貸借対照表の表示方法に関して、大まかな区分を定めています。また、企業会計原則や、財務諸表等規則、連結財務諸表規則、あるいは純資産会計基準において貸借対照表および連結貸借対照表に区分掲記すべき項目、区分の名称等が流動・固定の別に定められています。

一方、IAS第1号が定めている表示科目は、すでにわが国の企業会計基準および関係諸法令等によって個々に対応されており、実質的な差異は小さいと考えられること、および、IASBとFASBで進めている財務諸表表示プロジェクトの動向により大きな影響を受けるため、第2部で取り扱われている論点と併せて中長期的に検討を行うことが適当であると考えられました(論点整理第116項)。

第2部の論点のうち、【論点B】事業セクションと財務セクションの区分、【論点C】マネジメント・アプローチ、【論点E】事業セクションおよび営業カテゴリーと投資カテゴリーの定義、および【論点F】財務セクションおよび財務資産カテゴリーと財務負債カテゴリーの定義が、この【論点6】と関連があります。

【論点7】その他

IAS第1号は財務諸表の一般的特性として、適正な表示、離脱の定め、継続企業の前提に関する注記、発生主義会計、重要性と合算、表示方法、報告の頻度、比較情報および表示の継続性などを定めています。IAS第1号と比較し、国際的なコンバージェンスの観点から、これらの点についてわが国の会計基準の見直しが必要かどうかを検討しています。

【検討事項】

  1. どのような場合に適正な表示が達成されるかを会計基準に明示すべきか。
  2. 会計基準等からの離脱の定めを設けるか。
  3. 継続企業の前提に関する注記を会計基準に定めるか。
  4. 表示に関する重要性と合算に関する取り扱いを明示するか。
  5. 総額表示ないし純額表示(相殺)の取り扱いを見直すべきか。
  6. 報告の頻度を明示すべきか。
  7. 比較情報の記載の必要性や比較期間を会計基準に明示すべきか。
  8. 表示の継続性を会計基準に明示すべきか。
  9. 注記事項に関する一般的な定めを会計基準に明示すべきか。

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