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「財務諸表の表示に関する論点の整理」について

第1回:論点整理の構成と短期的な対応

2010.03.24
新日本有限責任監査法人 ナレッジセンター
公認会計士 山岸聡
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はじめに

平成21年7月10日に企業会計基準委員会(ASBJ)から「財務諸表の表示に関する論点の整理」(以下、論点整理)が公表されました。

論点整理は、財務諸表の表示に関する会計基準の設定を検討するに当たり、包括利益の表示、非継続事業に関連する損益の損益計算書における区分表示のほか、IASBおよびFASBにより平成20年(2008年)10月に公表されたディスカッション・ペーパー「財務諸表の表示に関する予備的見解」(以下、DP)において検討されている主要な論点を示し、議論の整理を図ることを目的としています。

本稿で論点整理の内容を検討してみたいと思いますが、文中意見にわたる部分は私見であることをあらかじめお断り申し上げます。

1.国際的な会計基準の動向

IFRSでは財務諸表の表示に関する規定はIAS第1号「財務諸表の表示」に定められていますが、現在、FASBと共同で財務諸表の表示を再検討しています。検討は3段階に分けられ、第1段階であるフェーズAはすでに審議を終了して、現在は第2段階であるフェーズBの検討を行っている最中ですが、その成果として公表されたのが、IASBとFASBによるDPです。

プロジェクト計画によりますと、今後は平成22年(2010年)に公開草案を公表し、平成23年(2011年)に新しい会計基準を公表する予定になっています。

なお、国際的な会計基準とは、国際財務報告基準(IFRS、IASなど)と米国会計基準(SFAS)を想定しています。

2.論点整理の構成

論点整理は、第1部「現行の国際的な会計基準との差異に関する論点」と第2部「IASBとFASBの予備的見解における主な論点(フェーズB関連)」から構成されています。

(1) 第1部「現行の国際的な会計基準との差異に関する論点」

財務諸表の表示に関する現行の国際的な会計基準とわが国の会計基準との差異分析を行い、その中で短期的に対応すべき項目としてどのようなものがあるかを検討することを目的としています。

具体的には、IAS第1号「財務諸表の表示」、IAS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」を中心にわが国の会計基準との差異分析を行った上で対応すべき項目を検討していますが、IASBにおけるフェーズBの検討結果により現行の取り扱いが大きく変更される可能性が高い項目や、短期的に対応する必要性が乏しいと考えられる項目は、第2部で取り扱われている中長期的な論点と併せて検討することが適切という考え方から、結果的に、後述するように、論点1から3までは短期的に対応すべき論点として、論点4から7までは主に中長期的に対応することが適当とされました。

例えば、キャッシュ・フロー計算書について、現行のわが国の基準と国際的な会計基準との差異は小さいため、第1部での検討対象に含めていませんが、フェーズBでは根本的な変更が提案されており、現行の取り扱いが大きく変更される可能性が高い項目に該当するため第2部で取り上げる扱いとしています。

【短期的な対応】

【論点1】包括利益の表示

【論点2】非継続事業に関連する損益の損益計算書における区分表示

【論点3】売却目的保有の非流動資産および処分グループの貸借対照表における区分表示

【中長期的な対応】

【論点4】損益の段階別表示

【論点5】損益項目の性質別開示

【論点6】貸借対照表における流動固定区分と表示科目

【論点7】その他


(2) 第2部「IASBとFASBの予備的見解における主な論点」

第2部は会計基準のコンバージェンスを進めていくに当たって、DPに示された論点のうち、特に重要と考えられる論点を質問事項として掲げて、わが国の市場関係者からのコメントを求めることを目的としたものです。DPに対応する中長期的な検討の方向性を問う内容となっています。

【論点A】財務諸表の表示の目的

【論点B】事業セクションと財務セクションの区分

【論点C】マネジメント・アプローチ

【論点D】各セクションにおける資産および負債の純額表示

【論点E】事業セクションおよび営業カテゴリーと投資カテゴリーの定義

【論点F】財務セクションおよび財務資産と財務負債カテゴリーの定義

【論点G】収益および費用項目の分解

【論点H】キャッシュ・フロー計算書の直接法による作成

【論点I】キャッシュ・フロー計算書と包括利益計算書との調整表


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