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外貨建取引

第4回:在外子会社の換算と処理

2010.09.24
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡
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2. 少数株主持分割合相当額の按分

少数株主持分は、為替換算調整勘定を含む資本のうち少数株主持分割合相当額を少数株主持分に振り替えます。この結果、少数株主持分は全面時価評価法による評価差額を含む在外子会社の現地通貨による資本のうち、少数株主の持分割合相当額を決算時の為替相場により換算した額と一致することになります(実務指針39項)。

(少数株主持分の按分イメージ)

在外子会社貸借対照表上の純資産 少数株主持分割合 少数株主持分
株主資本等変動計算書における期末残高 全面時価評価法による評価差額を含む在外子会社の現地通貨による資本のうち、少数株主持分割合相当額を決算時の為替相場により円換算した額と一致する
為替換算調整勘定※1、※2

  1. ※1子会社等の売却の意思が明確な場合等には税効果会計が適用されます。
  2. ※2連結手続上において生じたのれんの換算で発生した為替換算調整勘定については、親会社持分に係るものであることから、少数株主持分には振り替えません。

3. のれんまたは負ののれん
(1) 支配獲得時の把握

のれんまたは負ののれんは、親会社が在外子会社(財務諸表項目が外国通貨表示)を連結する場合に、原則として支配獲得時(みなし取得日を用いる場合には子会社の決算日(みなし取得日))に当該外国通貨で把握します(実務指針40項)。

(2) のれんまたは負ののれんの換算と処理

a. のれん

外国通貨で把握されたのれんの期末残高については決算時の為替相場により換算し、のれんの当期償却額については、原則として在外子会社の会計期間に基づく期中平均相場により他の費用と同様に換算します(実務指針40項)。
また、当該換算により為替換算調整勘定が生じますが、親会社持分に係るものであるため、少数株主持分には振り替えません。

(のれんの平成20年改正の改正点)

従来、在外子会社の取得により生じたのれんについては、親会社の通貨である取得時の円貨額で固定されているとの考えに基づき、取得時の円貨額で把握され、その後の為替変動による影響を受けないとされていました。
しかし、平成20年改正では、以下の理由によりのれんは外国通貨で把握し、決算日の為替相場で換算することとされました。

  • のれんの主要な部分は実質的に個別の認識の要件を満たさない資産を構成するものと考えられるため、在外子会社株式の取得により生じるのれんは当該在外子会社の他の資産と同様に、在外子会社の現地通貨で発生したものと見て換算することが整合的であるため。
  • 在外子会社の子会社(在外孫会社)の連結においては、親会社が在外孫会社の財務諸表を直接換算する場合と、在外子会社の連結財務諸表として換算する場合があるが、在外孫会社を資本連結する際に生じたのれんを決算日の為替相場で換算することにより、整合的に取り扱うことができるため。

b. 負ののれん

負ののれんは取得時または発生時の為替相場で換算し、負ののれんが生じた事業年度の利益として処理します(実務指針40項)。
また、負ののれんは、生じた事業年度の利益として処理するため、為替換算調整勘定は発生しません。

4. 在外子会社等の決算日が連結決算日と異なる場合の換算
(1) 貸借対照表

在外子会社等の決算日が連結決算日と異なる場合、在外子会社等の貸借対照表項目の換算は、在外子会社等の決算日における為替相場を用いて換算します(実務指針33項)。
なお、連結決算日との差異期間内において為替相場に重要な変動があった場合には、在外子会社等は連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続による決算を行い、当該決算に基づく貸借対照表項目を連結決算日の為替相場で換算する必要があることに留意が必要です。

(2) 損益計算書

在外子会社等の決算日が連結決算日と異なる場合、在外子会社等の損益計算書項目の換算に適用される期中平均相場は、当該在外子会社等の会計期間に基づく期中平均相場になります(実務指針34項)。

5. 子会社持分に係るヘッジ取引
(1) 会計処理の概要

ヘッジ会計の要件と満たした場合、子会社に対する持分への投資をヘッジ対象としたヘッジ手段から生じた為替換算差額について、為替換算調整勘定に含めて処理する方法を採用することができます(会計処理基注解13)。
ただし、ヘッジ手段から発生する換算差額が、ヘッジ対象となる子会社に対する持分から発生する為替換算調整勘定を上回った場合には、その超過額を当期の損益として処理することになります(なお、税効果控除後の換算差額をもって為替換算調整勘定をヘッジする方法によっている場合には、税引後の換算差額と為替換算調整勘定とを比較して超過額を算定します。)(実務指針35項)。

会計処理の概要 図解
(2) ヘッジ会計の要件

この場合のヘッジ会計の要件は、金融商品会計に関する実務指針に準拠することになります。その際に、ヘッジ対象とヘッジ手段が同一通貨の場合には、要件の一つである有効性に関するテストを省略することができます(実務指針35項)。

(3) 持分法適用会社

持分法適用会社に対する持分への投資についてヘッジ取引を行っている場合にも同様な経済的効果が認められるため、在外子会社の場合と同様に取り扱うとされています。

6. 持分変動(減少)に伴う為替換算調整勘定の処理
(1) 会計処理の概要

持分変動により親会社の持分比率が減少する場合、連結貸借対照表に計上されている為替換算調整勘定は持分比率の減少割合相当額が実現したこととなるため、その額を株式売却損益として連結損益計算書に計上します。これは、連結貸借対照表の純資産の部に計上された為替換算調整勘定は、在外子会社等に対する投資持分から発生した未実現の為替差損益としての性格を有すると考えられるためです(実務指針42項)。

(2) 連結修正手続における具体的な会計処理

個別損益計算書に計上された株式売却損益に含まれる為替差損益相当額を連結損益計算書においてもそのまま計上するために、連結貸借対照表に計上されている為替換算調整勘定のうち売却持分相当額の取崩処理を行います。

7. 未実現損益の消去方法

連結会社間の棚卸資産の売買およびその他の取引に係る未実現損益は、売却日に売却元から生じることから、取得時または発生時の為替相場で換算します(実務指針45項)。

ただし、取得時または発生時の為替相場に代えて、実務上原則的な方法により難い場合には、合理的な為替相場を使用して未実現損益を計算することができるとされています。

  原則 例外
国内会社から在外子会社等に売却した場合※ 売却元(国内会社)の売却価格×売却元の利益率 購入先における外貨建資産残高×売却元の利益率×決算時の為替相場(または購入先での資産保有期間に基づいて計算した平均相場)
在外子会社等から国内会社に売却した場合 売却元の売却価格(外貨額)×売却元の利益率×取引時の為替相場 購入先における円貨建ての棚卸資産残高×売却元の利益率

なお、未実現損益を消去した後に、棚卸資産の売却や固定資産の減価償却等を通じて実現した未実現損益を戻入処理する必要がありますが、未実現損益の円貨額は売却年度で確定しており、その後に為替変動の影響は受けないとされています。このため、在外子会社等の外貨による売上原価や減価償却費自体の円換算は決算ごとの為替相場によりますが、未実現損益の戻入金額は売却年度の円貨額で固定され、固定資産等の減価償却性資産に係る未実現損益については減価償却方法および耐用年数等に基づき規則的に戻し入れることになります(実務指針45項①)。

8. 在外持分法適用会社の財務諸表項目の換算と連結方法

在外持分法適用会社の財務諸表項目の換算は、在外子会社の財務諸表項目の換算と同様の処理を行い、損益計算書上の当期純損益の持分相当額を持分法による投資損益として連結損益計算書上の営業外損益の区分に計上するとともに、取得後の利益剰余金の持分相当額について投資勘定と利益剰余金の修正を行います。
在外持分法適用会社の財務諸表項目の換算から生じた為替換算調整勘定の持分相当額は、連結上の為替換算調整勘定として純資産の部に計上します(実務指針46項)。

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