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外貨建取引

第2回:為替予約等の処理

2010.09.09
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡
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ヘッジ対象である外貨建金銭債権債務等とヘッジ手段である為替予約等との関係が、金融商品に関する会計基準におけるヘッジ会計の要件を満たしている場合には、当該外貨建金銭債権債務等についてヘッジ会計を適用することができるとされています。
ここで、会計基準においては、従来の実務に対する配慮から、ヘッジ会計を適用する際に、当分の間、特例として振当処理によることができるとされています。

今回は会計基準において定められている特例について、ポイントを整理していきます。

1.振当処理の定義

振当処理とは、為替予約等により固定されたキャッシュ・フローの円貨額により外貨建金銭債権債務を換算し、直物為替相場による換算額との差額を、為替予約等の契約締結日から外貨建金銭債権債務の決済日までの期間にわたり配分する方法をいいます(実務指針3項)。

2.振当処理の会計処理

外貨建金銭債権債務等に係る為替予約等の振当処理においては、当該外貨建金銭債権債務等の取得時または発生時(決算時の為替相場を付した場合には当該決算時の為替相場)による円換算額と為替予約等による円貨額との差額のうち、「直々差額」と「直先差額」に区分した上で処理します(実務指針8項)。

(1) 差額の定義と原則処理

「直々差額」とは、外貨建金銭債権債務等の取得または発生時から、為替予約等の締結時までに生じている直物為替相場の変動による円貨額をいい、予約等締結日の属する期の損益として処理します。
「直先差額」とは、為替予約等の締結時の直物為替相場と為替予約等の締結レートとの差額の円貨額をいい、予約等締結日の属する期から決済日の属する期までの期間にわたって合理的な方法により期間配分し、各期の損益として処理します。
(合理的な方法としては、日数または月数による期間を基準として各期へ配分します。また、金額の重要性が乏しい場合は、為替予約等を締結した日の属する事業年度の損益として処理することが認められます。)
次期以降に配分された額は、貸借対照表上、長期前払費用または長期前受収益として両建て表示します。ただし、決済日が決算日から1年内に到来するものは、前払費用または前受収益として表示します。

設例にしてまとめると、以下のようになります。

≪設例:直々差額と直先差額の算定と処理方法≫

(前提条件)
ヘッジ会計の要件を満たしているとします。

(取引の概要)

2月1日 取引日: 金額$10、決済日を4月30日として商品を輸入した。
3月1日 締結日: 仕入債務$10について、為替変動リスクを回避するために、為替予約相場$1=\107、かつ、決済日を期日とする為替予約契約を締結した。
3月31日 決算日  
4月30日 決済日  

直物為替相場:2月1日 $1=\106、3月1日 $1=\108

図解

(算定方法)

時点 円貨額の算定   差額の算定と会計処理
  差額算定 処理方法
取引発生時
(2月1日)
発生時の為替相場による円貨額
$10×\106=\1,060
(仕訳例)
借方-仕入     1,060
貸方-買掛金  1,060
 
予約締結日
(3月1日)
為替予約締結日の為替相場による円貨額
$10×\108=\1,080



取引発生時から予約締結日までの為替変動による円貨額
1,060-1,080=-20
予約締結日の属する期の損益として処理
(仕訳例)
借方-為替差損益  20
貸方-買掛金        20



為替予約等の締結時の為替相場と為替予約等の締結した予約相場との差額
1,080-1,070=10
予約等締結日の属する期から決済日の属する期までの期間にわたって合理的な方法※1により期間配分する。
※2
(仕訳例)
借方-買掛金     10
貸方-前受収益  10

※2、※3
決算日
(3月31日)
期間:3月の1カ月分
按分:\10×1/2=\5
(仕訳例)
借方-前受収益     5
貸方-為替差損益  5
 ※4
決済日
(4月30日)
為替予約等の締結した予約相場による円貨額
$10×\107/$=\1,070
(仕訳例)
借方-買掛金     1,070
貸方-現金預金  1,070
期間:4月の1カ月分
按分:\10×1/2=\5
(仕訳例)
借方-前受収益     5
貸方-為替差損益  5
 ※4

※1 合理的な方法としては、日数または月数による期間を基準として各期へ配分します。
※2 直先差額について金額の重要性が乏しい場合は、為替予約等を締結した日の属する事業年度の損益として処理することが認められます(実務指針8項)。
※3 次期以降に配分された額は、貸借対照表上、長期前払費用または長期前受収益として両建て表示します。ただし、決済日が決算日から1年内に到来するものは、前払費用または前受収益として表示します。
なお、重要性のないものについては、区分掲記しないことができます(実務指針10項)。
※4 原則は為替差損益に含めて表示しますが、合理的な方法により配分された直先差額は、金融商品会計に関する実務指針における債券に係る償却原価法に準じて、利息法または定額法により利息の調整項目として処理することもできます(実務指針9項)。

(2) 例外処理

なお、為替予約等の契約が外貨建取引の前に締結されている場合には、実務上の煩雑性を勘案し、外貨建取引および金銭債権債務等に為替予約相場による円換算額を付すことができます(実務指針8項)。
設例にしてまとめると、以下のようになります。

≪設例:外貨建取引前に為替予約が締結された場合の例外処理≫

(前提条件)
ヘッジ会計の要件を満たしているとします。また、税率は40%とし、繰延税金資産の回収可能性ありと仮定しています。

(取引の概要)

2月1日 締結日: 予定される仕入取引$10について、為替変動リスクを回避するために、為替予約相場$1=\112、かつ、決済日を買掛金の予定決済日5月31日とする為替予約契約を締結した。
3月31日 決算日  
4月30日 取引日: 金額$10、決済日を5月31日として商品を購入した。
5月31日 決済日  

為替相場※:3月31日 $1=\108、4月30日 $1=\113、為替予約決済日 $1=\114
※ 説明の単純化のため、先物為替相場は直物為替相場と同一と仮定しています。

(算定方法)

時点 円貨額の算定   差額の算定と会計処理
  差額算定 処理方法
為替予約締結時
(2月1日)
 
決算日
(3月31日)



期末までに生じている予約相場差額
(繰延ヘッジ損益の算定)
\112-\108×$10×60%(税引計算)=24
期末までに生じている予約相場差額について、繰延処理が必要となります。
なお、繰延ヘッジ損益は、評価・換算差額等として、これに係る繰延税金資産または繰延税金負債の控除後の金額を純資産の部に計上します。
(仕訳例)
借方-繰延ヘッジ損益  24
       繰延税金資産※  16
貸方-為替予約          40
翌期首
(4月1日)








前決算時の繰延仕訳の反対仕訳となります。 前決算時の繰延処理について、戻入処理を実施します。
(仕訳例)
借方-為替予約          40
貸方-繰延ヘッジ損益  24
        繰延税金資産    16
取引日
(4月30日)
為替予約相場による円換算額を付します。
$10×\112=\1,120
(仕訳例)
借方-仕入   1,120
貸方-買掛金  1,120
 
決済日
(5月31日)
為替予約相場による決済額を付します。
(仕訳例)
借方-買掛金  1,120
貸方-現預金  1,120
 

設例では検討を省略していますが、繰延ヘッジ損益に対する税効果の適用は税効果実務指針に基づくとともに、回収可能性の判断においては、貸借対照表上の純資産の部の表示に関する会計基準等および日本公認会計士協会監査委員会報告第66号に基づいて判断する必要があります。
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