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金融商品

第7回:デリバティブ取引、債権の評価(貸倒引当金)、その他

2010.11.10
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡
新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久
新日本有限責任監査法人 公認会計士 中村崇
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19.デリバティブ取引の特徴と会計処理

(1)デリバティブ取引の特徴

デリバティブとは、以下のような特徴を有する金融商品です(実務指針第6項)。

  1. その権利義務の価値が、特定の金利、有価証券価格、現物商品価格、外国為替相場各種の価格・率の指数、信用格付け・信用指数または類似の変数(基礎数値と呼ばれる)の変化に反応して変化する基礎数値を有し、かつ、想定元本か固定もしくは決済可能な決済金額の両方を有する契約です。
  2. 当初純投資が不要であるか、または市場の変動に類似の反応を示すその他の契約と比べ当初純投資をほとんど必要としません。
  3. その契約条項により純額(差金)決済を要求もしくは容認し、契約外の手段で純額決済が容易にでき、または資産の引き渡しを定めていてもその受取人を純額決済と実質的に異ならない状態に置きます。

(2)デリバティブの会計処理

金融商品会計基準では、デリバティブ取引により生じる正味の債権および債務は、原則として時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額はヘッジに係るものを除き当期の損益として処理することとされています(実務指針第101項)。
会計処理は、以下のようになります。

  会計処理方法
原則的処理 対象となるデリバティブについて時価で評価し損益に計上する。
例外処理 ヘッジ手段として適格なデリバティブ取引 原則として時価評価されるが、評価差額は、即時に損益に計上することなく繰り延べる。繰延処理された評価差額は、ヘッジ対象の損益計上時期に合わせて損益として処理される。
公正な評価額を算定することが極めて困難なデリバティブ取引 公正な評価額を算定することが極めて困難なデリバティブ取引については、取得原価で評価する(EX ウェザー・デリバティブ等)。

①上場デリバティブ取引の時価評価
取引所に上場しているデリバティブ取引により生じる債権および債務は、貸借対照表日における当該取引所の最終価格(終値、終値がなければ気配値(公表された売り気配の最安値又は買い気配の最高値、それらがともに公表されている場合にはそれらの仲値))を用いて時価評価します。同日において最終価格がない場合には同日前直近における最終価格を用います。また、委託手数料等取引に付随して発生する費用は時価に加味しません(実務指針第101項)。

②非上場デリバティブ取引の時価評価
取引所の相場がない非上場デリバティブ取引の時価は、市場価格に準ずるものとして合理的に算定された価額が得られればその価額とします。合理的に算定された価額は、一般に、下記のいずれかの方法を用いて算定します(実務指針第102項)。

<合理的に算定された価額>
算定方法 詳細
(i)インターバンク市場、ディーラー間市場、電子売買取引等の随時決済・換金ができる取引システムでの気配値による方法 取引所以外でも、いわゆる流通市場ないしセカンダリーマーケットでデリバティブ取引の気配値を入手できる場合があります。複数の市場で気配値を入手できるデリバティブ取引については、会社が通常使用する市場又はより活発な市場での価格を使用します。保有しているデリバティブ取引そのものに気配値がない場合でも、類似するデリバティブ取引に気配値がある場合には、当該気配値に契約上の差異等を調整して、時価を見積もります。
(ii)割引現在価値による方法 類似する取引に気配値のないデリバティブ取引については、将来キャッシュ・フローを見積もり、それを適切な市場利子率で割り引くことにより現在価値を算定します。
将来キャッシュ・フローの見積りは、一般に、契約上の諸条件を将来の各期間に展開し、信用リスク等のリスクを加味することによって行います。一方、適切な市場利子率は、一般に、短期の利子率については先物市場の相場又は銀行間短期資金貸借の気配値を参考にし、また、長期の利子率については金利スワップの気配値等を参考にして各将来時点の市場利子率を算定し、各将来時点を補間することによりイールドカーブを描いて見積もります。なお、信用リスク等のリスクを将来キャッシュ・フローに反映されることができる場合には、市場利子率はリスク・フリーに近いものを使用します。他方、リスクを将来キャッシュ・フローに反映させることが実務的に困難な場合には、市場利子率をリスク要因で補正します。
(iii)オプション価格モデルによる方法 オプション取引については、ブラック・ショールズ・モデル等のオプション価格モデルを用いて時価を算定します。

時価は原則として自ら算定すべきですが、取引相手の金融機関やブローカー等から入手した価格を自らの責任で使用することができます。

③時価のないデリバティブ取引の会計処理
非上場デリバティブ取引の時価評価に当たっては最善の見積額を使用するが、取引慣行が成熟していないため内容が定まっていない一部のクレジット・デリバティブ、ウェザー・デリバティブ等で公正な評価額を算定することが極めて困難と認められるデリバティブ取引については、取得価額をもって貸借対照表価額とします(実務指針第104項)。

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