企業会計ナビ
金融商品

第5回:金利スワップ・予定取引の会計処理とヘッジ会計の中止・終了

2010.10.27
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡
新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久
新日本有限責任監査法人 公認会計士 中村崇

15.金利スワップ等の特例処理

(1)特例処理の対象

会計基準注解14において、「資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されている金利スワップが、金利変換の対象となる資産又は負債とヘッジ会計の要件を満たしており、かつ、その想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が当該資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、その金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することができる」とされています。
本来、デリバティブ取引は原則として時価評価を行い、ヘッジ取引であれば時価ヘッジか、繰延ヘッジ処理を行わなければなりませんが、想定元本と負債額など、利率、利払日、契約期間がほぼ同一である場合は、一定の要件を満たせば一体と見なして会計処理を行うことができます。

(2)特例処理の要件

  1. 対象資産または負債と想定元本の一致
    金利スワップの想定元本と対象資産または負債の元本金額がほぼ同一であることが求められています。
    →「ほぼ同一」とは5%以内の差異であるとの意味です。

  2. 契約期間および満期の一致
    差異日数が金利スワップまたはヘッジ対象資産などの契約期間または満期日のいずれかの5%以内であればほぼ一致していると考えられます。
    →例えば、5年の金利スワップでは3カ月の差異までほぼ一致と考えてよいことになります。

  3. 基礎となるインデックスの一致
    →例えば、TIBORとLIBORであれば比較的高い相関関係を示すと考えられますが、プライムレートとLIBORであると通常はほぼ一致しているとはいえないと考えられます。

  4. 金利改定日の一致

  5. 固定金利、変動金利のインデックスの同一性

  6. ヘッジ手段に期限前解約オプション等が存在する場合のヘッジ対象の同等の条件を相殺するためのものであること

16.予定取引に係るヘッジ

ヘッジ対象には、予定取引により発生が見込まれる資産又は負債も対象となります。予定取引のヘッジによりヘッジ手段に生じた損益または評価差額は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで、繰延ヘッジ損益として繰り延べられます(実務指針第338項)。
予定取引とは、未履行の確定契約に係る取引と、契約は成立していませんが、取引予定時期、取引予定物件、取引予定量、取引予定価格などの主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、それが実行される可能性が高い取引のことをいいます。
予定取引がヘッジ対象となるかどうかについては、以下の点を総合的に吟味する必要があります(実務指針第162項)。

  1. 過去に同様の取引が行われた頻度
  2. 企業が当該予定取引を行う能力(法的、制度的、資金的な能力)の有無
  3. 当該予定取引を行わないことの不利益の有無
  4. 同等の効果、成果を有する代替的取引がないかどうか
  5. 当該予定取引発生までの期間(おおむね1年以内)の妥当性
  6. 予定取引数量の妥当性

予定取引にヘッジ会計を適用し、計上された繰延ヘッジ損益は、当該取引の実行時に次のように処理されます(実務指針第338項)。

予定取引により損益が直ちに発生する場合
ヘッジ対象である予定取引に係る損益は、予定取引の実行時に認識されるので、繰延ヘッジ損益もその時点で損益認識することになります。

予定取引が資産の取得である場合
繰延ヘッジ損益は、資産の取得原価に加減算し、当該資産の取得原価が費用計上される期の損益として計上します。

17.ヘッジ会計の中止と終了

(1)ヘッジ会計の中止と終了

次のケースの場合、ヘッジ会計の適用を中止しなければなりません(実務指針第180項)。

  1. 当該ヘッジ関係がヘッジの有効性の評価基準を満たさなくなった場合
  2. ヘッジ手段が満期、売却、終了、行使のいずれかの事由により消滅した場合

この場合は、ヘッジ対象が引き続き存在しているけれども、ヘッジ会計を適用すべきヘッジ関係が存在しなくなったケースであり、この場合を「ヘッジ会計の中止」と呼びます。
また、ヘッジ対象が消滅した場合、またはヘッジ対象である予定取引が実行されないことが明らかになった場合は、「ヘッジ会計の終了」と呼びます。

(2)ヘッジ会計の中止の会計処理

  1. ヘッジの有効性を満たさなくなった場合
    ヘッジが有効であった期間に係る繰延ヘッジ損益は、ヘッジ対象の損益が認識されるまで、繰り延べます。また、ヘッジ有効性が満たされなくなった時点から、ヘッジ手段の損益は、当期の損益として計上します。なお、ヘッジ期間中にヘッジを外すこともヘッジ有効性を満たさなくなったということと同義ですので、同様の処理を行います。

  2. ヘッジ手段の消滅
    ヘッジ手段が消滅した場合は、消滅時点まで繰り延べられていたヘッジ手段の損益は、ヘッジ対象の損益が認識されるまで繰り延べます。

(3)ヘッジ会計の終了の会計処理

繰り延べられていたヘッジ手段の損益は、ヘッジ手段の消滅などの時点においてすべて当期の損益として認識します。また、その後のヘッジ手段の損益も発生時に損益として認識されます。

(4)ヘッジ会計終了時点における損失の見積もり

ヘッジ会計中止後の相場変動等により、ヘッジ対象に係る含み益が減少し、資産として繰り延べていたヘッジに係る損失または評価差額に対して重要な不足額が生じている場合には、当該不足額のうち、ヘッジ会計適用中止後におけるヘッジ対象の相場変動に相当する部分の金額を損失として当期の損益に計上します(実務指針第182項、第183項)。

金融商品

情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?