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第4回:ヘッジ会計の概要

2010.10.20
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡
新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久
新日本有限責任監査法人 公認会計士 中村崇

13. ヘッジ会計の基本的考え方

(1) ヘッジ会計の定義

ヘッジ取引は、「ヘッジ対象の資産又は負債に係る変動相場を相殺するか、ヘッジ対象の資産又は負債に係るキャッシュ・フローを固定してその変動を回避することにより、ヘッジ対象である資産又は負債の価格変動、金利変動及び為替変動といった相場変動等による損失の可能性を相殺することを目的として、デリバティブ取引をヘッジ手段として用いる取引」と定義されます(会計基準第96項)。

(2) 会計処理の対象

会計処理としては原則として、次の二つの方法があります。

  1. 時価評価されているヘッジ手段に係る損益をヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部で繰り延べる繰延ヘッジ
  2. ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動などを損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する時価ヘッジ

企業会計では、これらの企業のリスクヘッジ行動のうち、時価変動やキャッシュ・フロー変動額が合理的に測定可能な金利変動リスク、為替変動リスク、価格変動リスク、信用リスクについて、また、これらのリスクを回避する企業活動のうち、

  • 相場変動リスク
  • キャッシュ・フロー変動リスク

に対し、ヘッジの効果を認識しますが、このヘッジの効果を認識する会計手法を、ヘッジ会計をいいます。

(3) ヘッジ対象およびヘッジ手段

具体的なヘッジ対象

  1. 相場変動による損失の可能性がある資産又は負債のうち、相場変動が評価に反映されていないもの
  2. 評価には反映されているが評価差額が当期の損益として処理されていないもの
  3. 資産又は負債に伴うキャッシュ・フローが変動するものに対するキャッシュ・フローを固定化するもの

ヘッジ手段となるのは原則としてデリバティブ取引のみで、現物資産はヘッジ対象とはなりません。これは、原則としてデリバティブについては時価評価が原則であるのに対して、現物資産の評価基準は一様ではなく、多くの例外処理ができる可能性があるため、ヘッジ手段を限定することにしたことによります。

(4) 個別ヘッジと包括ヘッジ

a. 包括ヘッジ

包括ヘッジとは、個々の資産又は負債が共通の相場変動などによる共通のリスク要因(金利リスク、為替リスクなど)の損失の可能性にさらされており、かつ、そのリスクに対する反応が同一グループ内の個々の資産または負債との間でほぼ同様である場合、ヘッジ対象(リスクの共通する資産または負債をグルーピングしたもの)とヘッジ手段との間に包括的な対応関係を認識するものです。

b. 個別ヘッジ

ヘッジ対象とヘッジ手段が一対一の関係にあるものは個別ヘッジといいます。ヘッジ取引開始時において、包括ヘッジを採用するか、個別ヘッジを採用するかを決定することが必要となります。

c. 包括ヘッジを用いた場合の評価差額の配分の方法

  • ヘッジ取引開始時または終了時における各ヘッジ対象の時価を基礎とする方法
  • ヘッジ取引終了時における各ヘッジ対象の帳簿価額を基礎とする方法
  • ヘッジ取引開始時からヘッジ取引終了時までの間における各ヘッジ対象の相場変動幅を基礎とする方法