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工事契約に関する会計基準

第4回:工事進行基準適用に伴う法人税及び消費税等の留意事項

2009.02.16
(2018.08.24更新)
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 中村 崇

1.今回のテーマ

「工事契約に関する会計基準」及び「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下、工事契約基準等)の解説シリーズ第4回においては、工事進行基準適用に伴う法人税及び消費税等の留意事項について解説します。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをお断り申し上げます。

2.法人税における留意事項

(1)法人税法の規定

工事進行基準の適用に関する法人税の取扱いは以下の通りです(法人税法64条、法人税法施行令129条~131条等)。

項目 摘要
  1. 工事進行基準が強制される対象(長期大規模工事)
下記の三つの要件を満たす工事
  • 工事期間(着手の日から引渡期日まで)が1年以上
  • 請負対価の額が10億円以上
  • 請負対価の額の1/2以上が目的物の引渡し期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていないもの
  1. 工事進行基準の適用が認められる工事(長期大規模工事以外)
着工事業年度から引渡し日の属する事業年度の前事業年度まで、工事進行基準で継続して会計処理を行った工事(※ただし、着工事業年度後のいずれかの事業年度において、工事進行基準で会計処理しなかった場合には、その事業年度の翌事業年度以後は、税務上工事進行基準が認められない)
  1. 受注製作のソフトウェアの取扱い
法人税法上も「工事」に含まれるため、工事進行基準が適用される(強制適用、任意適用の対象)
  1. 工事進行基準による未収入金の取扱い
金銭債権として貸倒引当金の対象に含める

(2)会計と税務の関係

第1回で記載したとおり、会計上は成果の確実性が認められる場合(三要件を満たす場合)に工事進行基準が適用され、税務上は長期大規模工事に該当する場合に工事進行基準が強制適用されます。このように、会計と税務では工事進行基準が強制適用される条件が異なるため、税務調整を必要とするケースが考えられます。なお、税務上は幾つかの特例を設けることにより、税務調整を必要とするケースを限定しているものと思われます。

以下、税務上の特例を含め、両者の関係をまとめてみます。

会計処理 (例示) 区分 例示の場合の税務の扱い
着手当初から進行基準 成果の確実性が認められるケース 当初から進行基準
税務上、長期大規模工事には進行基準が適用されるため、会計との乖離(かいり)なし
当初から進行基準
任意適用の要件を満たせば、進行基準が適用される
着手当初から完成基準 対価が確定する前に、工事に着手したケース 当初から進行基準
なお、工事の進捗が初期段階の場合の特例(①)、請負対価の額が確定していない場合の取扱いあり(②)
当初から完成基準
なお、対価の額が確定していない場合の特例あり(③ⅰ・進行基準適用も可)
完成基準から進行基準に変更 途中で対価が確定したケース 進行基準のまま
完成基準から進行基準に変更
対価の額が確定していない場合の特例(③ⅱ)
進行基準から完成基準に変更 途中で契約内容の変更により、対価が見積れなくなったケース 進行基準のまま
なお、この場合には請負対価の額が確定していない場合の取扱いあり(②)
進行基準→完成基準
なお、対価の額が確定していない場合の特例あり(③ⅰ・進行基準適用も可)
着手当初から継続して完成基準 途中で対価が増加したことにより、税務上の長期大規模工事に該当することになったケース 完成基準→進行基準
なお、長期大規模工事に該当することになった場合の繰延の特例(④)あり。
着手当初から継続して進行基準 途中で対価が減少したことにより、税務上の長期大規模工事から除外されるケース 進行基準→完成基準
  • (注)区分は税務上の区分。
    「大」は「長期大規模工事」、「小」は「長期大規模工事以外」