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工事契約に関する会計基準

第3回:建設業・ソフトウェア業における留意点、国際財務報告基準(IFRS)との関係

2009.02.13
新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久
新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子

1.今回のテーマ

「工事契約に関する会計基準」(以下、会計基準)及び「工事契約に関する会計基準の適用指針」の解説シリーズ第3回においては、建設業・ソフトウェア業における留意点及び国際財務報告基準(IFRS)との関係について解説します。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをお断り申し上げます。

2.建設業における工事進行基準適用上の留意すべき内部統制

工事進行基準の不適切な適用により、虚偽の財務報告の事例があったことから、「建設業における工事進行基準の適用に係る監査上の留意事項(業種別委員会報告第27号)」が平成20年9月2日に日本公認会計士協会より改正されています。当該委員会報告は、①重要な虚偽表示のリスクを評価するに当たっての留意事項、②リスク評価手続を実施するに当たっての留意事項、③不正による重要な虚偽表示リスクの識別、④リスク対応手続の実施から構成されており、「監査上の留意事項」というタイトルになっているものの、建設業を営む会社が工事進行基準の適用にかかる内部統制を整備・運用するに当たり、参考になるものと考えられます。

ここでは、②リスク評価手続を実施するに当たっての留意事項より、留意すべきポイントと評価すべき内部統制について取り上げることとします。


留意すべきポイント 評価すべき内部統制
(1) 工事進行基準の適用に関する統制環境
工事進行基準による収益計上は、多くの見積作業に基づくことから、経営者や役職者等の誠実性や倫理観、財務報告に対する考え方に大きく影響を受ける。
  • 工事の施工管理及び損益管理に関する経営組織及び人的構成
  • 工事の施工管理及び損益管理に関する規程類の整備状況
  • 工事の施工管理及び損益管理に用いる情報技術及び情報システム
  • 工事の施工管理及び損益管理に対する工事所管部門、取締役会、監査役及び内部監査部門のモニタリング状況
  • 過去の見積りの精度あるいは見積修正の頻度
(2) 工事収益総額の見積り
設計変更による工事内容の変更や物価・賃金等の変動により当初の請負金が変更される場合には、請負金額の修正の取り扱いが問題となる(例えば追加変更工事が発注された場合、その追加変更を原契約と一体の認識の単位とするのか独立した単位とするのか)。
  • 受注計上に関する業務手続
  • 認識の単位の決定に関する業務手続
(3) 工事原価総額の見積り
見積りが工事の各段階における工事原価の見積りの詳細な積上げとして構成されている等、実際の発生原価と対比して適切に見積りの見直しができる状態となっており、この対比によって、適時・適切に工事原価総額の見積りの見直しが行われる必要がある。
  • 実行予算の作成手続及び承認手続
  • 予算実績管理の体制
  • 適時・適切な工事原価総額の見積りの見直しの体制
(4) 決算日における工事進捗(しんちょく)度の見積り
原価比例法を採用する場合は、工事原価発生額を、履行義務全体との対比において工事進捗度を合理的に示すように把握しなければならないが、例えば、外部製作業者に製造依頼する特注品等でいまだ物理的に据え付けられていない機器(製作中のものも含む)についても、検収が終わっているものについては工事進捗度の算定上工事原価に含めることが妥当である。
原価比例法以外の合理的に工事進捗度を把握することが可能な方法の具体例として、直接作業時間比率及び施行面積比率による方法等がある。
<原価比例法を採用する場合>
  • 外注費等の支払に当たっての出来高査定の体制
  • 請求書締切日から決算日までの出来高及び支払留保金等の調整の体制
  • 前渡金にかかわる管理体制

<原価比例法以外の方法を採用する場合>
  • 算定方法及びそれにかかわる業務手続