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工事契約に関する会計基準

第3回:建設業・ソフトウェア業における留意点

2009.02.13
(2018.08.24更新)
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 湯本純久
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 中村 崇

1.今回のテーマ

「工事契約に関する会計基準」(以下、会計基準)及び「工事契約に関する会計基準の適用指針」の解説シリーズ第3回においては、建設業・ソフトウェア業における留意点について解説します。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをお断り申し上げます。

2.建設業における工事進行基準適用上の留意すべき内部統制

工事進行基準は、一般的に会計上の見積りの不確実性の程度が大きく、重要な虚偽表示リスクが高くなることが多いと言えます。会計上の見積りの判断を誤ることによる誤謬(ごびゅう)のみならず、意図的な工事原価総額の見積りの調整や決算日における工事進捗度の調整を通じた工事収益の操作等の不正によるものも含まれ、虚偽の財務報告の事例も発生しています。工事進行基準におけるこれらの背景も踏まえ、関連する監査基準委員会報告書の要求事項を適切に適用するため、平成27年4月30日に「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」が日本公認会計士協会より公表されています。

当該監査上の取扱いは、主に「リスク評価手続とこれに関する活動」、「リスク対応手続」から構成されており、重要な虚偽表示リスクを発見、防止するための内部統制についても記載されていることから、「監査上の取扱い」ではあるものの、建設業を営む会社が工事進行基準の適用にかかる内部統制を整備・運用するにあたって参考になるものと考えられます。

ここでは、「リスク評価手続とこれに関する活動」から、評価すべき内部統制について取り上げます。

評価すべき内部統制
(1)全社的な内部統制
①統制環境
  • 工事契約の実行予算の策定管理及び見積り担当部署に関する経営組織
  • 工事契約の実行予算の策定管理及び損益管理に関する規程類の整備状況
  • 人事ローテーション
②財務報告に関連する情報システムと伝達
  • 工事進行基準の適用に関する会計上の見積りに必要となる情報の収集
  • 工事契約の損益管理等で利用される財務報告に関連する情報システム(関連する業務プロセスを含む。)の把握
③監視活動
  • 工事契約の実行予算の策定管理及び損益管理に対する工事契約所管部署等、取締役会、監査役等及び内部監査部門等のモニタリング状況
(2)業務プロセスに係る内部統制
①工事契約に係る認識の単位の決定
  • 工事契約に係る認識の単位の決定に関する業務プロセス
②工事収益総額の見積り
  • 受注登録(変更を含む。)に関する業務プロセス
  • 成果の確実性の事後的な獲得及び喪失に関する業務プロセス
③工事原価総額の見積り
  • 実行予算の策定手続及び承認手続に関する業務プロセス
  • 予算実績管理及び工事原価総額の見積りの見直しに関する業務プロセス
  • 成果の確実性の事後的な獲得及び喪失に関する業務プロセス
  • 発注に関する業務プロセス
  • 適切な工事原価総額の見積りが困難となる可能性のある契約に関する業務プロセス
④決算日における工事進捗度の見積り
  • 原価比例法の基礎となる発生した工事原価に関する業務プロセス
  • 人件費に関する業務プロセス
  • 関連のない他の工事契約に係る認識の単位との間の工事原価の振替及び付替えの防止に関する業務プロセス
  • 原価比例法を用いた決算日における工事進捗度の算定に関する業務プロセス
  • 原価比例法以外の方法を用いた決算日における工事進捗度の見積りに関する業務プロセス
  • 工事進行基準の適用の網羅性に関する業務プロセス
⑤工事損失引当金
  • 工事損失引当金の計上に関する業務プロセス
  • 工事損失引当金の網羅性に関する業務プロセス
⑥ITを利用した情報システム
  • ITに定められた方針や規定

建設業の内部統制については、企業会計ナビ―業種別会計の建設業の箇所においても解説しています。併せてこちらの記事もご覧ください。