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包括利益の表示に関する会計基準

第3回:組替調整額

2012.04.24
(2013.04.11 更新)
新日本有限責任監査法人 公認会計士 七海健太郎

6. 組替調整の必要性

時価のある有価証券に関する取得原価と時価との差額は、その他有価証券評価差額金の増減として、その他の包括利益を構成します。一方、その有価証券を売却した際には、売却時点の時価と取得原価との差額が売却損益として当期純利益を構成することになります。つまり、このような場合には、当期純利益に当期又は過去にその他の包括利益に含まれていた金額が含まれることとなり、前期以前のその他の包括利益と当期の当期純利益による包括利益における二重計上が生じることとなります。この二重計上を避けるための調整が、組替調整です。

7. 組替調整額の内容

組替調整(いわゆるリサイクリング)は、組替調整額として開示されますが、その他の包括利益の内訳項目ごとに組替調整額と考えられる部分は次のとおりです。

その他の包括利益の内訳項目 組替調整額と考えられる金額
その他有価証券評価差額金 当期に計上された売却損益及び減損損失等
繰延ヘッジ損益 ヘッジ対象に係る損益が認識されたことなどに伴って当期純利益に含められた金額
為替換算調整勘定 子会社に対する持分の減少に伴って取り崩されて当期純利益に含められた金額
退職給付に係る調整額(※) 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用について、当期純利益を構成する項目として損益処理された金額(※)

その他有価証券評価差額金

その他有価証券評価差額金は有価証券の時価の変動により増減し、その増減額はその他の包括利益に含まれます。時価のあるその他有価証券を売却や減損処理した場合、その他の包括利益に含まれた金額も含めて、売却損益や評価損が計上されるため、組替調整額として開示対象となります。これには期中取得・期中売却の場合も含まれます。

時価のないその他有価証券の売却損益及び減損損失については、組替調整額には該当しないと考えられます。しかし、外貨建株式については、時価のないものであっても、毎期の外貨換算に伴い、その他の包括利益が計上されることとなるため、売却損益及び減損損失についても、組替調整額に含まれることになると考えられます。

繰延ヘッジ損益

デリバティブ等のヘッジ手段に係る損益は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰り延べる方法により処理されるのが原則ですが、その損益は、税効果を調整の上、繰延ヘッジ損益として純資産の部に記載されます。ヘッジ対象に係る損益が認識された場合、繰り延べられたヘッジ手段に係る損益がデリバティブ等の損益として計上されるため、組替調整額として開示対象となります。これには、期中に発生し、実現した繰延ヘッジ損益も含まれます。

また、ヘッジ手段に係る損益だけでなく、ヘッジ対象とされた予定取引で購入された資産の取得原価に加減された損益も、組替調整額に準じて開示することが適当とされています(会計基準31項(2))。

なお、会計方針として振当処理を採用している場合の、予定取引をヘッジ対象とする為替予約を時価評価したことによる評価差額は、取引時点で資産の取得原価に振り替えられず、振戻されるため、実務上、組替調整額として開示されないことが考えられます。

為替換算調整勘定

為替換算調整勘定は、在外子会社等に対する投資持分から発生した未実現の為替差損益としての性格を有すると考えられますが、持分変動により親会社の持分比率が減少する場合、減少割合相当額だけ株式売却損益として損益計上します(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針42項)。よって、為替換算調整勘定のうち取り崩されて損益に含められた部分は、組替調整額として開示対象となります。

子会社に対する持分の売却時(一部売却及び全部売却)に伴い実現する為替の含み損益だけでなく、子会社の清算に伴って実現するものについても対象となります。

退職給付に係る調整額(※)

当期に発生した未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用のうち未処理のものは、税効果を調整の上、その他包括利益に計上されます。しかし、いずれも平均残存勤務期間内の一定の年数で規則的に損益処理されるため、損益処理された際には、組替調整額として開示対象となります。また大量退職などにより退職給付制度の終了の会計処理が行われた場合も、終了部分に対応する金額が損益処理されるため、対象となります。(※)

その他

土地再評価差額金の取崩しは組替調整額には該当せず、株主資本等変動計算書において利益剰余金への振替として表示するとされています(会計基準31項)。しかし、税率変更などに伴い生じる税効果額の変動は、その他の包括利益に含まれるため、留意が必要です。

(※)平成25年4月1日以後に開始する連結会計年度より。

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