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設例で解説 「キャッシュ・フロー計算書」

第3回:投資活動によるキャッシュ・フロー

2015.12.07
新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸正典
新日本有限責任監査法人 公認会計士 七海健太郎

1. はじめに

第1回と第2回は営業活動によるキャッシュ・フローについて解説しましたが、「第3回 投資活動によるキャッシュ・フロー」では、投資活動によるキャッシュ・フローについて、設例を使って解説していきます。

2. 投資活動によるキャッシュ・フローの意義

投資活動によるキャッシュ・フロー区分
【ポイント】
  • 投資活動によるキャッシュ・フローには、有形・無形固定資産の取得および売却、有価証券の取得および売却、貸し付けの実行および回収などの投資活動に関係するキャッシュ・フローの情報を記載します。

投資活動によるキャッシュ・フローには、固定資産の取得および売却、有価証券の取得および売却、貸し付けの実行および回収などの投資活動に関係するキャッシュ・フローの情報が記載されます。さらに、現金同等物に含まれない定期預金の預入・払戻も投資活動よるキャッシュ・フローに含まれます。
投資活動によるキャッシュ・フローは、企業が将来の利益獲得および資金運用のために設備投資や他企業に対する投資により、どれほどキャッシュを支出したか、固定資産や有価証券の売却等によってどれほどキャッシュを回収したかを示す情報です。経常的に設備(更新)投資を行っている場合、投資活動による正味のキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向にあります。

3. 有形固定資産の取得と売却・除却があった場合の設例

【ポイント】
  • 有形固定資産を取得および売却した場合、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分において、それぞれ「有形固定資産の取得による支出」および「有形固定資産の売却による収入」等の科目によって表示します。
  • 有形固定資産の取得および売却にかかる未払金および未収入金がある場合、未払金および未収入金の期首残高と期末残高の調整を行って、「有形固定資産の取得による支出」および「有形固定資産の売却による収入」を算定します。

【設例5】
(前提条件)

  • 有形固定資産
    期首残高:3,000、取得:2,000、減価償却費:500、
    売却簿価:1,000(売却価額:500)、期末残高:3,500
  • 有形固定資産の取得に係る未払金
    期首残高:200、当期発生:2,000
    当期支払:1,500、期末残高:700

(下の図をクリックすると拡大します)

【設例5】(前提条件)T字勘定とキャッシュ・フロー精算表

有形固定資産を取得および売却した場合、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分において、それぞれ「有形固定資産の取得による支出」および「有形固定資産の売却による収入」等の科目によって表示します。また、有形固定資産の売却に伴い発生する損益は、営業損益計算の対象にならない投資活動による損益なので、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分において調整が必要になります。 さらに、有形固定資産の取得および売却にかかる未払金および未収入金がある場合、「有形固定資産の取得による支出」および「有形固定資産の売却による収入」の算定にあたって、未払金および未収入金の期首残高と期末残高の調整が必要になります。

  • ※1,3有形固定資産の取得については、取得代金の決済が未了の場合は未払金の調整が必要となるため、有形固定資産の取得価額2,000に、取得に係る未払金の期首残高(+200)と期末残高(△700)の調整を行って、有形固定資産の取得による支払額1,500(2,000+200-700)を算定します。
  • ※2 投資活動による損益である有形固定資産売却損500を「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分においてプラスします。第1回【設例2】参照。
  • ※4 有形固定資産の売却価額である500を有形固定資産の売却による収入500として記載します。

(仕訳イメージ)

<有形固定資産の取得>

有形固定資産の取得

<有形固定資産の売却>

有形固定資産の売却

4. 有価証券の取得と売却があった場合の設例

【ポイント】
  • 有形証券を取得および売却した場合、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分において、それぞれ「有価証券の取得による支出」および「有価証券の売却による収入」等の科目によって表示します。
  • 時価のある有価証券を「その他有価証券」として保有している場合、期末に時価評価を行う必要がありますが、時価評価による有価証券の増減はキャッシュ・フローを伴わないため、調整が必要になります。

【設例6】
(前提条件)

  • 有価証券
    期首残高:1,300、前期時価評価洗替:300、取得:500、
    売却簿価:1,000(売却価額1,200)、期末残高:650
  • その他有価証券評価差額金 (税効果は考慮しない)
    期首残高:300、期首洗替:300、当期時価評価:150、期末残高:150
  • 有価証券の取得と売却については、既に代金精算済みとなっている。

(下の図をクリックすると拡大します)

【設例6】(前提条件)

有価証券を取得および売却した場合、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分において、それぞれ「有価証券の取得による支出」および「有価証券の売却による収入」等の科目によって表示します。また、有価証券の売却に伴い発生する損益は、営業損益計算の対象にならない投資活動に関する損益なので、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分において調整が必要になります。
さらに、時価のある有価証券を「その他有価証券」として保有している場合、期末に時価評価を行う必要がありますが、時価評価による有価証券の増減はキャッシュ・フローを伴わないため、「有価証券の取得による支出」および「有価証券の売却による収入」の算定にあたって調整が必要になります。

  • ※1まず、投資活動による損益である有価証券売却益200を「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分においてマイナスします。第1回【設例2】参照。
  • ※2有価証券の取得については、取得価額である500を有価証券の取得による支出としてキャッシュ・フロー計算書に記載します。なお、キャッシュ・フロー精算表上では、有価証券の増加額650について、キャッシュ・フローを伴わない時価評価による増加額150を控除することで、「有価証券の取得による支出」は取得価額500になります。
  • ※3有価証券の売却価額である1,200を有価証券の売却による収入1,200として記載します。なお、キャッシュ・フロー精算表上では、有価証券の減少額1,300について、キャッシュ・フローを伴わない前期に計上した評価差額の振戻額300を控除したうえで、有価証券売却益200をプラスすることで、「有価証券の売却による収入」は1,200になります。

(仕訳イメージ)

<有価証券の売却>

有価証券の売却

<有価証券の取得>

有価証券の取得

設例で解説 「キャッシュ・フロー計算書」


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