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税効果会計に係る会計基準の改正に関する公開草案等のポイント

2017.06.12
新日本有限責任監査法人 会計情報トピックス
村田 貴広

<ASBJから平成29年6月6日に公表>

平成29年6月6日に、企業会計基準委員会(ASBJ)より以下の会計基準等の公開草案(以下「本公開草案」という。)が公表されています。

  • 企業会計基準公開草案第60号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」(以下「税効果会計基準一部改正案」という。)
  • 企業会計基準適用指針公開草案第58号「税効果会計に係る会計基準の適用指針(案)」(以下「税効果適用指針案」という。)
  • 企業会計基準適用指針公開草案第59号(企業会計基準適用指針第26号の改正案)「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(以下「回収可能性適用指針案」という。)
  • 企業会計基準適用指針公開草案第60号「中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針(案)」(以下「中間税効果適用指針案」という。)

本公開草案は、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針のうち繰延税金資産の回収可能性に関する定め以外の税効果会計に関する定めについて、基本的にその内容を踏襲した上で、表示及び注記事項に関する定め及び必要と考えられる一部の会計処理について見直しを行うことを目的として公表されたものです。

本公開草案に対しては、 平成29年8月7日(月)までコメントが募集されています。

1. 本公開草案の概要

(1) 会計処理

本公開草案において会計処理の見直しが提案されている主な取扱いは次のとおりです。

  • 個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い(税効果適用指針案第8項(2))

現行の取扱いでは、個別財務諸表における子会社株式及び関連会社株式(以下合わせて「子会社株式等」という。)に係る将来加算一時差異について、一律、繰延税金負債を計上することとされています。本公開草案においては、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱いを、連結財務諸表における子会社及び関連会社に対する投資に係る将来加算一時差異の取扱いに合わせ、親会社又は投資会社がその投資の売却等を当該会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間に、その売却等を行う意思がない場合を除き、繰延税金負債を計上する取扱いに見直すことが提案されています。


  • (分類1)に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い(回収可能性適用指針案第18項)

回収可能性適用指針案第18項では、「(分類1)に該当する企業においては、原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。」と「原則として、」を追加することが提案されています。これは、例えば、完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損について、企業が当該子会社を清算するまで当該子会社株式を保有し続ける方針がある場合等、将来において税務上の損金に算入される蓋然性が低いときに当該子会社株式の評価損に係る繰延税金資産の回収可能性はないと判断することも考えられることを明確にするものであるとされています。
なお、完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損のように、当該子会社株式を売却したときには税務上の損金に算入されるが、当該子会社を清算したときには税務上の損金に算入されないこととされているものについて、当該子会社株式を将来売却するか、当該子会社を清算するか等が判明していない場合であっても、個別貸借対照表に計上されている資産の額と課税所得計算上の資産の額との差額は、当該差額が解消する時にその期の課税所得を減額する効果を有する可能性があることから、一時差異(将来減算一時差異)に該当することが明確化されました(税効果適用指針案第79項、80項)。

また、未実現損益の消去に係る税効果会計について資産負債法に変更するかどうかも審議が行われましたが、審議の結果、繰延法を継続して採用することが提案されています(税効果適用指針案第129項から第133項)。

(2) 開示

① 表示(税効果会計基準一部改正案第2項)

現行の取扱いでは、繰延税金資産及び繰延税金負債は、これらに関連した資産・負債の分類に基づいて、繰延税金資産については流動資産又は投資その他の資産として、繰延税金負債については流動負債又は固定負債として表示しなければならないとされていますが、本公開草案においては、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示することが提案されています。

② 注記事項

本公開草案では税効果会計に関する注記事項として以下の事項を追加することが提案されています。なお、「コメントの募集」(別紙4-1)にて税効果会計に関する注記事項の開示例が示されています。

ⅰ 評価性引当額の内訳に関する情報(税効果会計基準一部改正案第4項)

  • a評価性引当額の内訳に関する数値情報
    繰延税金資産の発生原因別の主な内訳(以下「発生原因別の注記」という。)として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、これまで発生原因別の注記に示されていた評価性引当額の合計額を、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載する。
  • b評価性引当額の内訳に関する定性的な情報
    評価性引当額(合計額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を記載する。

なお、将来減算一時差異等には、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等が含まれることが明確化されています。

ⅱ 税務上の繰越欠損金に関する情報(税効果会計基準一部改正案第5項)

  • a税務上の繰越欠損金に係る繰越期限別の数値情報
    発生原因別の注記として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、繰越期限別に次の数値を記載する。
    • 税務上の繰越欠損金の額に税率を乗じた額(発生原因別の注記に記載されている額)
    • 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額
    • 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産
  • b税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報
    税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を記載する。

ⅲ 連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項(税効果会計基準一部改正案第4項及び第5項)

連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表における税効果会計に関する注記事項については、評価性引当額の内訳に関する数値情報(上記ⅰ①)のみを追加することが提案されています。

(3) その他(現状の取扱いを変更しないことが提案されているもの)

平成25年3月に開催された第261回企業会計基準委員会において、基準諮問会議から新規テーマとして提言された、連結納税制度を適用する場合における税効果会計の取扱いと企業結合会計における税効果会計の取扱いの整合性についても、今回の移管に際し併せて検討が行われましたが、検討の結果、特に両基準の整合性を図らず現状の取扱いを変更しないことが提案されています(コメントの募集(別紙2))。

〈参考〉 連結納税制度を適用する場合における税効果会計の取扱いと企業結合会計における税効果会計の取扱いの比較
連結納税制度を適用する場合における税効果会計の取扱い 企業結合会計における税効果会計の取扱い
 連結納税親会社により、現在、連結子会社である会社を、将来、連結納税子会社として加入させること(子会社株式の追加取得)について意思決定がなされ、実行される可能性が高いと認められる場合には、将来、その加入が行われるものとして繰延税金資産の回収可能性を判断する。なお、現在、連結子会社でない会社については、この取扱いは適用しない(実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」Q13)。  繰延税金資産の回収可能性は、取得企業の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等により判断し、企業結合による影響は、企業結合年度から反映させる(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第75項)。

2. 適用時期等

(1) 適用時期

① 税効果会計基準一部改正案(上記1.(2)の取扱い)

平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用とし、公表後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末から早期適用できるとすることが提案されています(税効果会計基準一部改正案第6項)。

② 税効果適用指針案及び回収可能性適用指針案(上記1.(1)の取扱い)

平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することが提案されています(税効果適用指針案第65項(1)及び回収可能性適用指針案第50-2項)。

③ 中間税効果適用指針案

平成30年4月1日以後開始する中間連結会計期間及び中間会計期間の期首から適用することが提案されています(中間税効果適用指針案第22項)。

(2) 経過措置等

① 税効果会計基準一部改正案

税効果会計基準一部改正案に定める注記事項(繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)の合計額を除く) については、適用初年度の比較情報 に記載しないことができるとすることが提案されています(税効果会計基準一部改正案第7項)。 なお、「コメントの募集」(別紙4-2)にて適用初年度の比較情報に追加した注記事項を記載しない場合の開示例が示されています。

② 税効果適用指針案及び回収可能性適用指針案

税効果適用指針案第8項(2)(上記1.(1)①参照)及び24項又は回収可能性適用指針案第18項(上記1.(1)②参照)を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うことが提案されています(税効果適用指針案第65項(2)及び回収可能性適用指針案第50-2項なお書き)。なお、当該取扱いに関し経過的な取扱いは提案されていないため、新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及適用することになります。

3. 本公開草案に対するコメント

本公開草案に対するコメント募集に際し、以下の個別の質問が示されています。

  • [質問1]   個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い及び(分類1)に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いについて会計処理を見直す提案、未実現損益の消去に係る税効果会計について繰延法を継続して採用する提案に同意するか否か。
  • [質問2]   繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示するとの提案に同意するか否か。
  • [質問3-1]  評価性引当額の内訳に関する注記事項及び税務上の繰越欠損金に関する注記事項を追加する提案に同意するか否か。
  • [質問3-2]  連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項の追加は、コストと便益の比較の観点から、評価性引当額の内訳に関する数値情報のみにするとの提案に同意するか否か。
  • [質問4-1]  適用時期及び早期適用に関する提案に同意するか否か。
  • [質問4-2]  適用初年度における実務上の負担に配慮し、適用初年度の経過的な取扱いとして、税効果会計基準一部改正案に定める注記事項については適用初年度の比較情報に記載しないことができるとの提案に同意するか否か。
  • [質問5]   その他の意見

なお、本稿は本公開草案の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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