「企業結合に関する会計基準」及び関連する他の会計基準等の改正のポイント

2013年9月19日
カテゴリー 会計情報トピックス

会計情報トピックス 山澤伸吾

企業会計基準委員会が平成25年9月13日に公表

平成25年9月13日に、企業会計基準委員会(ASBJ)から「企業結合に関する会計基準」及び関連する会計基準等の改正(以下、「本会計基準等の改正」)が公表されました。
本会計基準等の改正は、連結財務諸表及び企業結合等に関する会計処理及び表示方法について、これまでとは大きく異なる取扱いを定めたものになります。

(改正された会計基準等)

  • 企業結合に関する会計基準
  • 連結財務諸表に関する会計基準
  • 事業分離等に関する会計基準
  • 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準
  • 株主資本等変動計算書に関する会計基準
  • 包括利益の表示に関する会計基準
  • 1株当たり当期純利益に関する会計基準
  • 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針
  • 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針
  • 株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針
  • 1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針

平成20年12月に改正されました企業結合会計基準等により、EU同等性評価に関連した欧州証券規制当局委員会(CESR)からの補正措置項目として提案されていました会計基準等の差異(ステップ1)については解消されましたが、それ以外の差異(ステップ2)については平成21年7月に「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」が公表され、意見が求められるとともに、検討が行われていました。
本会計基準等の改正は、論点整理や委員会で取り上げられた事項のうち、当期純利益の表示、非支配株主との取引、暫定的な会計処理の取扱い等についての改正が公開草案として提案された後、寄せられたコメント等の分析を経た上で公表されています。

1. 本会計基準等の改正の概要

改正事項 現行 改正後
表示関係 少数株主持分 非支配株主持分
少数株主損益調整前当期純利益 当期純利益
少数株主損益 非支配株主に帰属する当期純利益(注1)
当期純利益 親会社株主に帰属する当期純利益(注1)
子会社に対する支配が継続している場合の親会社持分変動(非支配株主との取引)による差額 追加取得の場合の差額は「のれん」又は「負ののれん」として計上し、一部売却の場合の差額は持分変動損益に計上 追加取得、一部売却における対価と親会社持分との差額を資本剰余金とする
一部売却の場合、親会社の持分の減少に対応するのれんの未償却額を減額する 一部売却の場合、のれんの未償却額は減額しない
取得関連費用の取扱い 取得原価に含める 発生年度の費用(注2)
暫定的な会計処理の確定の取扱い 企業結合年度の翌年に確定したときは確定した年度において「のれん」を修正し、特別損益として処理 企業結合年度の翌年に確定したときは比較情報となる企業結合年度の財務諸表を修正

注1:2計算書方式の場合には、当期純利益に非支配株主に帰属する当期純利益を加減して親会社株主に帰属する当期純利益を表示することとし、1計算書方式の場合には、当期純利益の直後に、親会社株主に帰属する当期純利益及び非支配株主に帰属する当期純利益を付記。

注2:子会社株式の取得関連費用については個別財務諸表上、金融商品に関する会計基準に従って算定し、連結財務諸表においては、発生した連結会計年度の費用として処理する。

2. 適用時期

原則適用 平成27年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首(暫定的な会計処理の確定の取扱いは平成27年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される企業結合)から適用
早期適用 表示以外の改正(非支配株主との取引の会計処理、取得関連費用の取扱い、暫定的な会計処理の確定の取扱い)は、表示に関する改正を除くすべての取扱いを同時に適用する場合には、平成26年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首(暫定的な会計処理の確定の取扱いは平成26年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される企業結合)から早期適用可能

3. 経過措置等

適用初年度において、非支配株主との取引について過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を期首の資本剰余金及び利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用します。

ただし、上記定めによらず、今回の改正会計基準が定める新たな会計方針を、適用初年度の期首から将来にわたって適用することができるとされています。

また、表示方法に関する改正については、当期の財務諸表に併せて表示されている過去の財務諸表の組替えを行うとされています。

4. 公開草案からの主な変更点

論点 改正前 公開草案 最終公表
子会社に対する支配が継続している場合における子会社株式の一部売却時ののれんの未償却額の取扱い 親会社の持分の減少に対応するのれんの未償却額を減額する。 改正前と同。 のれんの未償却額は減額しない。
非支配株主から追加取得する子会社株式の取得原価に係る親会社の個別財務諸表上の会計処理 追加取得時における当該株式の時価とその対価となる財の時価のうち、より高い信頼性を持って測定可能な時価で算定する。 非支配株主から自社の株式のみを対価として取得する子会社株式の取得原価は、親会社の個別財務諸表上、当該子会社の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定する。 改正前と同。

5. 本会計基準等の改正で対象とされていない主な論点

① 子会社に対する支配の喪失の会計処理
② 全部のれん
③ のれんの非償却
④ 企業結合に係る特定勘定、条件付取得対価、新株予約権を付与する場合の処理、企業結合とは別個の取引等

なお、本稿は本会計基準等の改正の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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